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これからの未来-4
「そうだよな。お前頭いいし、そのまま就職とかじゃないよな」
「まぁ……大学受験は両親の希望でもあって」
「そっかそっか頑張れよ!てか受験生がこんなとこでセックスしてていいのかよ!」
「それとこれとは関係ないでしょ?俺だって少しでもコウちゃんといたいし。コウちゃんは俺といたくない?」
「いたいに決まってるだろ?けどお前の将来も大切だ」
先に就職しているコウちゃんだから理解あるんだと思った。だからこの先の話だって普通にできたんだ。
「それでね。大学は隣の県の工業大学にするんだ」
「へぇ……俺の時にも何人か行ってるやつはいたけど、お前も将来的には工業系の仕事に就くんだ?」
「まぁ、一応そうなっちゃうだろうね。でも開発とか研究系だよ」
「ふぅん。まっ、俺はお前を応援するくらいしか出来ないけど、頑張れよ!」
「ありがとう」
ぽんぽんと俺の頭を叩いたコウちゃんは満面の笑顔だった。
だから俺はコウちゃんが理解してくれていると思ったけど、実際はそうじゃなかったんだ……
――悪い!今日は予定があって遅くなるから行けない!――
そんなメールがここ最近コウちゃんから度々入るようになった。
季節も秋から冬に移ろうかとしている時期だった。これくらいの時期になると、俺もいよいよ追い込みになってきたので、二人のタイミングが合わない事などしょっちゅうだ。
就職組はほぼ内定をもらい、遊びほうけているが、俺のような大学進学組や専門組はまだまだ遊ぶ余裕なんてない。むしろ就職組を尻目にかなりピリピリとしている。
コウちゃんと会えないのは仕方ない。コウちゃんだって仕事の都合があるし、俺も勉強があったりする。けど、この「会えない」がどうにも釈然としなかった。そう感じ始めたのは、あの日コウちゃんに俺の進路を話して少ししてくらいだ。
前ほど会えなくはなっても、会えばどちらも言葉を交わさずベッドになだれ込んでいた。その度にコウちゃんが「もっと」とせがむが、普段なら嬉しいのだが、逆にその「もっと」が不安になって仕方なかった。
「はあぁぁ……」
なんだか鬱々としてため息を漏らしていると、「どうした?」と背後から中沢先生が声をかけてきた。
「あぁ、先生いたんですね」
「いたんですねって……ちょうど側を通っただけだよ。それよりどうした?らしくないため息なんかついて。受験行き詰ってるって感じじゃないよな?」
「勉強はぼちぼちです」
「だろうな。って事は浩二の事か?」
ただの友人、ただの先生にしては中沢先生はかなり鋭いと思う。それだけの世渡りをしてきたのかもしれないが……
「最近コウちゃんおかしいとこないですか?」
「あいつが変なのは今に始まった事じゃないだろ」
「いや、そうじゃなくて……」
「お前の言いたい事はわかってるって。そうだな……俺の前では普通にしてるな。結構無理して」
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