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これからの未来-8
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決して忘れていたわけじゃない。
ただどう連絡をすればいいのかわからなかったから……
俺に嘘をついて中沢先生と飲みに行って、翌日に話を聞いたけど、どうして嘘をついたんだろう。女の人とかだったら何か言ったかもしれない。けど中沢先生との仲は知ってるんだし、嘘をつく必要がないじゃないか。
それは後ろめたさからじゃなく、俺に対して何か言いたくても言えないでいるんだよね。
「本当のとこはあいつの口から聞け」
中沢先生にそう言われ、すぐにでも聞こうと思った。けど中々折り合いがつかずに今日になってしまった。しかもクリスマスだし……
今日は俺も午前中は学校に用があったので行って来た。
町のショーウィンドウに並ぶクリスマス商品や、木に飾られたイルミネーションを見ながら、本当にクリスマスだなと思った。これから夜になるともっと賑わうだろう。
こういう時にアルバイトでもしていたら、コウちゃんにクリスマスプレゼントの一つでも買えたんだろうけど、そんな高価なものは買えない。なので帰りにケーキ屋に行きケーキを買った。
帰ってしばらくするとコウちゃんが帰ってきたので、メールで「今から行く」と打つと、「わかった」と返事が来た。ムードあるクリスマスだけど、それを味わう前にコウちゃんの話を聞かなきゃいけない。
買ってきたケーキを手に俺はコウちゃんの家に行った。
「よ、よぉ……久しぶり」
「うん。久しぶりだね」
玄関を開けたコウちゃんはどこかよそよそしかった。
「一応クリスマスだし、ケーキ買ってきたよ」
「あ、あぁ……ありがとな」
「ごめんね。全然連絡出来なくて」
「いや、お前だって忙しんだし、気にしなくていいよ」
リビングに行くとコウちゃんからおばさん達が旅行に行ったと言っていた。ここの両親はいつまでも仲良しだな。ちょっと前までの俺達もそうだったはずなのに……
「コウちゃん」
「伊織……」
ぎゅっと背後から抱きつくと、コウちゃんは少し肩をこわばらせたが、すぐに緊張が解け、お互い何も言わず唇を重ね合わせた。
「ん、ん……あっ」
「コウちゃん。大好きだよ」
「お、俺も……」
舌が深い場所で絡まり、コウちゃんの両腕は俺の首に巻きついた。ここでなし崩しにセックスもいいのだろうが、その前にコウちゃんの話を聞かなくちゃいけない。
「ねぇコウちゃん。前に飲み言った時、どうして嘘なんてついたの?」
「べ、別に深い意味は……」
「相手中沢先生だよね?俺に嘘つくって事は、中沢先生と何かあった?」
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