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ふたりのゆめ-1

 幸せな家庭を作って、子供をもうけて、子育てをして、マイホームを手にする。ありきたりな夢は男女夫婦の一生の宝だろう。  だが同性間ではどうなのか?同性同士の結婚が認められていないこの国では、結婚した時に受けられる国からの補助もなければ、マイホームを建てる際の銀行から借りられる金もなかなか借りづらい。それに同性というだけで周囲からは冷ややかな目で見られる。そのためにひっそりとしていかなくてはいけない。  それをもろともせず堂々としている輩もいるが、俺からしたらそういう奴らは勇者だ。中にはどうしても籍を入れたいって事で養子縁組をする奴もいるだろう。  俺もそれでいいとは思うが、それもそれで何かと揉める原因の一つでもある。 「はぁ……」 「なんだよのっけからため息なんかついて」  相変わらずの交友を続けている中沢と飲んでいた時、ふとした拍子にため息が漏れた。 「いや、なんていうかさ……世の中厳しいよな」 「お前が理論的な話するなんて珍しいな。何かあったか?」 「実はさ、俺が伊織と付き合ってるの会社の奴に知られて……」 「あらら……何?脅されてるとか?」 「違う違う。そいつも同性と付き合ってるらしくて、今度結婚するんだとさ。って言っても形だけだし籍自体は養子縁組ならしいけど」 「ほぉ……」  すごいなそいつと言いながら中沢は次のビールを注文した。  確かにすごいと思う。周りにどんな目を向けられようとも、親から文句を言われても自分の意志をそいつらは貫いた。 「んで?それを聞いてお前も滝沢と結婚したくなったか?」 「まぁ、出来るもんならな。けど伊織はまだ大学三年だし……俺達は同性であって……」 「けっこう固い事考えてるんだな。まっ、もしも同性同士で結婚出来るようになったらお前は二度目か」  中沢は笑っているが、俺としては結構シビアな問題だ。  恋人の伊織はただいま大学三年だ。俺達は遠距離になってしまったが、毎日メールをしたり電話をしたり、一か月に一回は必ず会っている。順調と言えば順調だし、よくそこまで持ったなと言うのも事実だ。  問題は伊織の事ではなく俺の事だ。

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