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第4話 、ダークスーツ

「 いらしゃいませーー、あ〜ら、サキちゃん、一人?」 「 イヤ 〜、二人 ーー !! 」 「 じゃぁ〜、ボックスね ーー 」 ソファーに腰を降ろすと、顔見知りの、ちぃママが、席につき 飲み物を聞いてくる>> 「 ボトル有ったわよね 〜 ⁉ 、水割りでいぃーー ?」 「 良いよ ーー、ちぃママもなんか飲んで 〜 」 「 サキちゃん、こちらの方は ーー ? 」 「 友達の重ちゃん、俺たちグループを作っててさ、会員は今の所、四人だけーー只今、募集中ってとこかなーー 」 「 私も入れるかしら ーー? 」 「 う〜ん、30年後でもい〜い ?、それにダークスーツ着用だよーー 」 「 どう言う意味かしら ーー、それって、駄目ってことね !! 」 ボックス席が、笑いに包まれ、カウンターや他の席からの視線が、集まる。 高笑いと共に、ダークスーツ姿の二人は、そのビジュアルからしても、 抜きん出ていて、ゲイバーではとても目立つ。 その視線の多くは、羨望の眼差しではあるが、怪訝そうな表情も 幾つか見える>>( なんだぁ〜、この二人はーー?、ホストクラブ ?、それともマフィア ?>>でも、二人は、一向に気にも留めない )…‥…。 ちぃママが、店の子達の同席を求めて、承諾を得ると、 カウンターから二人を、呼び寄せ、席につかせる>> 「 マサト君とトモキ君でーーす、宜しくね 〜 」 ダークスーツの一人は、麻生の100円ショップのお客さんで、 、智樹が恋心を抱いている、イケてる例の人。 もう一人も負けじ劣らず、いい男で、席に、着くなり智樹は、顔を赤らめ、緊張し、借りてきた猫ようになってしまう…… ちぃママが、一所懸命に二人を売り込む>> 「 マサト君はレギュラーで、東京からの子、 内緒だけどまだ16才よーー>> トモキ君は、金·土だけのバイト、函館だったけーー?、今、18……ね 」 今度は、視線を逆向きにして、ちぃママが言ってくる>> 「 こちらは、サキちゃん、ススキノでお店やってる方、もう一人の方は さっき、私も知ったばかりだけど、重ちゃんよね ーー 智樹の憧れの彼から自己紹介を始める 「 三咲(ミサキ)って言うんだけどーー宜しくーー 、 今は、フリーで、恋人募集中かなぁ〜 」、次に重ちゃんという名の彼も >> 「 重則(シゲノリ)ですーー、色黒なのは、フィリピンとのハーフとかじゃなく、 アウトドアのせいで〜すーー、」 ………… ……… 智樹は、一ヶ月ほど前に、初めてこのゲイバーに、飲みに来たが、 泥酔してしまい、他のお客さん二人と合計三人で、『 ママ 』の 家に泊めさせて貰うことに……  飲んでいた時間の後半は、余り記憶がなくて、 智樹が恋しているダークスーツの人と、何を喋って、その彼が いつ帰ったのかも覚えていない―――  ママ の家で、昼に起き、ごはんをご馳走になりながら、 週末のバイトをママから勧められ、承諾し、お店に入ってまだ、2週間目……… ………智樹の憧れの人が、ニコーッと笑いながら、 「 この前は、どうも>>結構、酔ってたよね、大丈夫だったーー⁉ 」 「 あら 、知り合い ? 」ちぃママが聞いてくる 「 うん、まぁーー、この前、ちぃママ休みの日だったかなぁ~、                    ここで隣同士で飲んだんだよねーー 」 智樹は、 一ヶ月前のあの時は、憧れの彼がいるせいで、 酒をバカ飲みしてしまった>>なんて事は、言えなくて>>その彼を、見詰めながら、明るく応える>> 「 はい、大丈夫でした ーー、なんか迷惑掛けませんでしたーー ⁉ 、」 「 いやーー 、別に 〜、とってもいい子だったよーー ! 」 その彼の優しい返答に、智樹はポッと赤くなる ーー その後は、皆んなの会話に合わせ、ニコニコしながら頷いているだけで 、 どうにも話しに入って行けず、少しの間、 ぼ~っとする ーー  突然、声がしたので顔を向けると>>重則さんがこっちを見ている…… 三咲さんとマサト君、ちぃママは、馬鹿話しで盛り上がっている最中だ―― 「 智樹君、休みいつ ? 今度グループの飲み会やるんだけど出ない ーー? 会員募集中だしーー 」 智樹は、ゲイの世界の知り合いは少ないし、なんてたって 三咲さんがいるのだから、断る手はないと思い、 「 良いですよーー !!、行きますーー !! 」 「 良かったーー 、詳しくは、後でねーー… 」 なにも重則としては、智樹を気に入って誘ったのではなくーー 最近、三咲から話の折に何回か、気になる子が出来たと、聞かされ ていてーーそして、 今、まさに目の前の子だと三咲から、そッと耳打ちされ、 >>ここは、俺がとりもってやろう>>と智樹にコンタクトを試みた。 …………… …………… ……仕事を終えての帰り道、智樹は、1時間以上かかる、 道のりを、アパートのある北の方へと向かって歩いている―― あたりは、まだまだ暗く、歩く人はまばらで、タクシーのライトと、 街頭のネオンの明かりだけが目に入る。 日の出までは、もう少し時間があり、肌寒さを感じてはいるが、智樹は節約と酔い冷ましを兼ねての歩みを、トボトボトボトボと、自分を元気付けながら続けて行く‥‥‥‥ ………そんな、智樹の心の中は、 ーー三咲さん、 誰とも付き合っていないって、どうしてーー バイセクシャルーー?>>もしかして結婚してたりしてーー この前、一緒に飲んだ時や、100円ショップで顔を合わせた時の僕に、 どんな印象を持ったの〜?>>今日の重則さんの誘いはどんな意図が~? ーーいろんな考えが渦巻いて、智樹を悩ませてゆくーー …………… ……智樹は、先週も店で、ゲイの人何人かから、声を掛けられたが、 踏ん切りがつかず、孤独感だけが膨らみ、気落ちし迷いもしていた……  そして、自分は人を愛することが、 出来るのかーーもしかして、幼い時からの境遇で、 精神がどこか病んでいるのではとーー  そんな折の、今日の誘いは、智樹にとっては、 どんな意味にしろ、 天から降りたつ、神様からの救いの手、 そのものであったのだ――――……………。

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