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第16話
「……ん?」
朔ちゃんは口角を左右に広げて、俺を見下ろした。「なに、触ってほしい?」
「……うん」
素直に答えれば、くすりと笑い声が返ってくる。朔ちゃんは俺の身体を引っぱりあげると、ふかふかのベッドに組み敷き、ぬかるんだ唇にしゃぶりついてきた。口腔の至るところを無遠慮に舐められ、じゅるじゅると下品な音を立てながら舌を吸われ、その卑猥さと気持ち良さに頭がくらくらとする。
もっと深く交わりたくて朔ちゃんの頭を掻き抱き、顔を押しつける。震えた鼻息が頬にかかる。朔ちゃんも興奮しているのが分かり、それだけで腹の底から湧き出ていた肉欲に勢いがついた。微弱電流が走ったかのような鋭くて切ない痛みが胸に響き、それに連動するようにくぐもった声が漏れた。
「……んんっ、ぅ……んぁ……!」
キスをしたままスカート越しに臀部を鷲掴みにされ、ぐにぐにと揉みしだかれる。その動きに合わせて、Tバックが尻に食い込んでいく。皮膚や穴に擦りついてくる感触さえも気持ち良くて、けれどもそれだけではあまりにも物足りなくて、うねる腰を朔ちゃんに押し当てた。
「ふっ……んは、ぁ……さくちゃん……」
「……ははっ」
唇同士が触れるかどうかの距離で、朔ちゃんは愉快げに笑った。
「もっとしてほしい?」
小さくうなずけば、彼の両手は俺の上半身をまさぐり始めた。シフォンシャツの下にするりと手を入れ、乳首をやわく摘まれる。甘い痺れが生まれた。うっすらと開いた口からは、掠れた声がまろび出る。
「あっ……ァ……!」
「……もう、びんびんになってる。えろい乳首だな」
「ん、ぁ……あぁ……っ」
くりくりと捏ね回され、指先で軽く弾かれ、きゅっと引っぱられ、そこは早々にじんじんとしてくる。息が乱れ、汗がじんわりと滲んできた。俺は震える手でシャツを捲りあげ、胸を突き出した。……彼の言う通り、米粒ほどの大きさの尖りは芯を持ち、ツンと立ち上がっていた。
にやにやと笑いながら、朔ちゃんは左側のそれをべろりと舐め、嬌声をあげる俺を見つめて、さらに笑みを深くする。あぁ、調子に乗り始めるなと思いながらも、快感に身を任せていると、つと舌の動きが止まった。何だと思い、閉ざしていたまぶたをあげれば、朔ちゃんはなぜか心底不思議そうな表情を浮かべ、俺の顔を覗き込んでいた。
「……え……、なに……?」
「……アイツら、お前に見向きもしなかったな」
アイツらと言われ、眉間に皺が寄った。
「あのふたりの話? どうしたの、急に」
「こんなに綺麗なのに、何で眼中になかったんだろうな」
首を傾げ、「分かんねぇ」と独りごちられても……。
人にはそれぞれ好みがある。例の二人組は、朔ちゃんの化粧映えする華やかな顔立ち、あるいは高身長で筋肉質な体躯、もしくはその両方に惹かれたのだろう。朔ちゃんは綺麗だと言ってくれるけど、俺は自分の容姿を地味だとしか思わない。つまり、君とは真逆のタイプだから、そりゃあ興味を持たないでしょ、というのが答えだ。
「いや、もしあの時、俺じゃなくてお前がナンパされてたら、すげぇ嫌だったけど」
俺は目をぱちくりさせ、朔ちゃんを見つめた。
「それって、どういう意味?」
「どういう意味って、そりゃあ……」
「ヤキモチ妬いてくれるってこと?」
「……まぁ、そういうこと」
そう言って、朔ちゃんは仏頂面になる。「というか普段から割と……」
「割と、なに?」
言葉の代わりに深いキスが返ってきた。バツが悪くなったのだろう。俺はそれ以上、追及しなかった。というか、どうでも良かった。朔ちゃんの右手がスカートの中に入り込み、器用にTバックを脱がした。ペチン、と勃起したペニスが下腹部に当たる音がする。それから彼はスカートをばっと捲りあげて、俺の局部を紫の照明のもとに晒した。
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