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第21話

「だって、すき……好き……っ」 「俺のちんぽが?」 「おちんちん、だけじゃ……朔ちゃんが好き、大好きぃ……」 何故だか涙が溢れて、ポロポロとこぼれていく。朔ちゃんはそれを仔犬のようにぺろぺろと舐めてくれた。まなじりにキスを落とし、「俺も」と囁いてくれる。 ……感極まっているのだ。止めたいのにまったく止まらない涙は、汗と混ざって顔を濡らしていく。 「……朔ちゃんっ、あっ、あ……おれだけの、モノ……だよ……っ」 「あぁ……、俺はお前のもんだ。お前は、俺だけの……」 「うん……っ、おれのぜんぶ、君だけのモノだから……!」 ヤキモチを妬いていたのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、俺たちはお互いしか見ていなかった。剥き出しの本能とまっすぐな愛情で相手の瞳を包み、肉体に溶け込ませていく。繋がった部分から順番にどろりと溶け出し、ふたつの身体はひとつになっていく。……決して有り得ないのに、自分たちなら為し得てしまうのではないか。そんな馬鹿なことを想っているうちに、高みはすぐそこまで見えていた。 「……馨、もういっかい」 「うん……出して……っ、おれのお腹……ぱんぱんになるくらい、いっぱいっ……!」 獣じみた表情を浮かべた朔ちゃんは極まった声をあげ、スパートをかけてくる。臀部や直腸が壊れて潰れてしまうのではないかと思うほどの獰猛な動きだった。それが死ぬほど気持ち良くて、脳がぐずぐずに熟れて崩れていきそうで、艶っぽさなどこれっぽっちもない声で、俺は鳴いた。 「ああ! アッ……くる、ッ……あああっ! きちゃ……ッ!」 「……あっ……ッ……!」 朔ちゃんの動きが奥の奥で止まった瞬間、昂りがどくどくと脈打ちながら熱い体液を放出したのを感じた。足のつま先をピンと伸ばし、ぷっくりと腫れているであろう乳首を見せつけるかの如く胸を大きく反らし、全身を硬直させて、俺も真っ白な閃光の中へと意識を飛ばした。 苦痛を感じるほどの強い快楽が、汗だくの肉体―皮膚や肉、骨、そして血液までもを蹂躙し、心臓が荒波のようにうねる。戦慄く唇の間隙から細切れに漏れる声や吐息はガラガラに掠れ、滂沱のような涙が目尻を伝って、耳や髪を湿らせていった。 「うぅ……あ、ァ……さく、ちゃん……」 最後の一滴まで搾り出し、くたりと倒れ込んできた朔ちゃんの蒸れに蒸れた身体に、力が入らないなりに縋りつく。ぜぇぜぇと肩で息をし、時折唸るような声を漏らし、絶頂の余韻に浸る彼の髪を優しく撫でる。俺のなかにいる雄は硬さも熱も質量もなくなっていた。 目をうっすらと開ければ、俺の薄い胸に頭を預けてぐったりとしていた朔ちゃんも、気怠げに俺を見上げた。荒い呼吸を整えながらしばらくの間無言だったが、やがて俺たちはふにゃりと笑い、労わるように唇を啄ばんだ。……情熱的なセックスの直後とは思えない、かわいらしい口づけだった。

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