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第13話

 鴬から与えられた痛みに身が引き締まった。朽ちた自制心の欠片を踏んだように痛み、理性を思い出す。ぴた、と通常運転の仁作に戻り、鴬のはだけたシャツを直す。 「高校生に手を出しちまった……。怖かったよな、ごめんな」  胸元を隠してやるが、既に仁作が堪能した後であるがゆえに、ツヤツヤとした粒がシャツと擦れて、じんわりと滲んでしまう。それを見てまた昂りそうになるので、咳払いをして見なかったことに徹した。 「僕、別に、拒んでなかったよね……。何でやめちゃうの」 「え、あ、悪い。でも俺、まだ捕まりたくねぇから」 「……ふふ、大丈夫だよ。真剣なお付き合いなら、だけど」  柔和に笑む鴬に仁作も胸を撫で下ろす。鴬の気移りがしないうちに、仁作は自身の猛りを鎮めることに精を出す。鴬の乱れた姿を目に映さないよう、視線を合わせず集中した。  それが功を奏して、和やかな雰囲気に絆されかけた仁作は、「——僕に手を出したんだから、ずぅっとそばにいるよね?」と脅迫めいた鴬の発言で目を覚ます。  二面性のある鴬の裏を思案しなかった仁作は、「——心配すんな。そんな脅しを使わなくてもそばにいるよ」と素直にいった。  「俺もお前と同じ気持ちを抱えて今日まで一緒に住んできたんだ、情けねぇが理性飛ばしてしまうくらいには……その、なんだ」と口元をまごつかせる。 「ええぇー。ソレは主張してるのに、肝心なことは言ってくれないのー?」  脂汗をかきながら、膨張し続けていた仁作のソレを言及されて、肩が小さく跳ねる。  「はぁぁ……。——っし」覚悟を決めて押し倒したままの鴬を抱き上げた。それから、柔らかい前髪をかき上げて、露になった茹で卵のでこに触れるだけのキスを落としていった。「俺と、付き合うか」。   仁作にとっては一世一代の告白だった。 「うん!!!」  間髪入れない返答に、思わず笑みが溢れる。 「ハハッ、高校生らしい元気な返事だ」 「仁作もソレは高校生の僕以上に元気だね!!」 「……デリカシーのかけらもねぇな、オイ。俺だってさっきから心頭滅却してんだよ……。っち、ちっとトイレ行ってくるわ」  立ち上がろうと鴬に回した腕を離すと「——僕がしようか?」下から覗く鴬が悩殺的な瞳でこちらを見る。 「——っ、鴬。俺はお前を大事にしたいから、今日はここまでにしとこうな。俺、さっきマジで理性ぶっ飛んでたから。お前の出すとこ怪我しかねん」  「な? 俺の大事にしたい気持ちを大事にしてくれるよな?」立ち上がる途中だったため、片膝をついて頭部を撫でた。 「ずるいよ……僕がどれだけ仁作を好きか分かってない……そんなこと言われたら大事にしなくちゃじゃん」 「おう、素直でいい子だ」 「……うん」 (あ、鴬、今愛想笑いした)  仁作は影を(はら)んだ表情の鴬に「そんじゃ、トイレ行ってくるけど、組の人には暫く俺らの関係は内緒にしよう。ま、バレないとは思うけど」と鴬の髪をがしゃがしゃ掻いて、髪の毛を堪能してからようやく立ち上がった。

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