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第21話
沈み込む尻と、同時に仁作の膝からもたさられる多少の軋む音が、鴬を期待させる。
「鴬。18まであとどれくらいだっけか」
「あと数ヶ月だよ」
「……じゃあ、数ヶ月フライングだけど、いいか?」
「——っ!! 待ってました!!」
せっかくサプライズで作った夕飯のことなどすっぽりと抜け落ちて、脳内には興奮で欲情に支配される。これまでキス止まりだったもどかしい日々におさらばできるのだ。
——きっと今まで以上に良心の呵責もどきと対峙する瞬間が減るのだろう。鴬は理知的に振る舞うことで、幼い自分を守る防具として仁作の隣を独占してきた。鴬にとって、それが一番脱いでしまいたいものである。
仁作が「今日ばっかりは最後までするからな」と何度も確認をしてくる。
「仁作、もういいから。早く」
「——っ、そう急かすな。飛びそうになんだろ」
勿体ぶっていたのではなくて、仁作自身の精神を落ち着かせるための時間稼ぎだったらしい。ベッドに鴬を下ろし、押し倒す形になった時点で湿った呼吸を荒くしていたくせに。
鴬にとっては焦らしプレイでしかない。「……っ、もう、飛ばしなよ。ワガママ言うんでしょ?」上に乗られている鴬が主導権を握ったように煽り続けた。
シャツをたくしあげ、仁作のチラリズムを刺激しながら、ニヒルに笑む。
「……っ」ついに呼吸だけになった仁作は、片手で鴬の手首を束ねる。それから、鴬自らたくし上げていたシャツを口に突っ込んで、自身は以前と同様にぷっくりと期待した艶やかな粒を噛んだ。
また、同じように、味がした。
嬌声を上げて、腰をくねらせる鴬。期待値を大いに超越していて、身体が自然と逃げ腰になる。それでも鴬は、「もっとっ」と口では強請り続ける。
そして、口を開いた時には仁作の顔は既にその場所にはない。
仁作は鴬の矛盾に気付かないまま、尚も言葉を発することなく逃げる鴬の腰を捕まえて、触れる舌が徐々に陰部へと下がってくる。
恥骨まで仁作の顔が下がってきたところで、顔を上げられた。瞬間的に不安に駆られたが、どうやら杞憂だったらしい。
「っと、ごめん。俺、余裕ないから、すぐ後ろ触りたい」
「ん、いいよ。ちょっと待って。僕、手が未だに使えないから、ベッドのとこの引き出し開けてもらえる?」
「っあ、ああ。悪い」
仁作自身も手が開放されて、両手が自由になったところで、鴬から指示された引き出しを開けてみた。
「んだコレ」率直に口角をひくつかせて、仁作は引き出しの中身を取り出す。ゴムは大量に出てくるわ、ローションは数種類出てくるわ、それも開封済みの物ばかりとツッコミどころがあまりに多すぎる。
絶賛ドン引き中の仁作は、暫時沈黙を作ってから「……お前は高校生か?」と組み敷いている秀才にいう。
「何言ってるのさ。僕は高校生だよ」
「……いや、でも、こんなたくさん常備しとくもんなのか? 今の高校生ってのは」
「そうだよ?! だって思春期だもの。そりゃたくさんシたいに決まってるじゃん」
(本当は早く仁作と既成事実が欲しいだけなんだけど……)
「……」
(あれ? 仁作の……さっきまですごかったのに、今なんか、萎んでない? 気のせい?)
「お前……俺が大事にしたい気持ちを大事にしてくれるんじゃなかったのか」
鴬を組み敷いている仁作が少し動いて、腹の上で跨ぐ。完全に馬乗り状態だ。心なしか、見下ろす仁作の視線も凍てつくような痛さを伴う。
しかし、鴬は仁作のいう秀才だ。
「ちょっと、勘違いしないで!!」
「……」
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