7 / 27

第7話

 アーサーが異世界に来て、初めての朝がやってきた。  とにかく、もう夜遅いからと、剤の庵で休んだアーサーは目覚めて、剤がいないことに気づく。 「もしかして、結構、寝てた?」  布団は勿論、布や剤の衣服をあるだけ掻き集めて、アーサーと剤は夜が更ける中、2人分の寝床を作った。 『ここは讃(ザァン)。元は火薬と血煙しかない町だったが、今は沢山の商人と笑い声が絶えない町』  剤の語る讃という町は寒さも暑さもなく、過ごしやすい気温だということもあり、剤が少しでも背中が痛くならないように上布団に、と剤が渡してくれた布団を渡す。 『アサ殿はお優しいよな』  アーサーとしては剤と一緒に布団で眠るか、剤が抵抗があるなら、自分が布の上に寝るでも良いと言ったのだが、剤は首を縦に振らなかった。 『客人にかような扱いはできぬし、お互いに思い人がいるのに、流石に同衾はよろしくなかろうて。それにまぁ、朝がくると、我は薬草を採りに出るでな』  気になさるな、と剤は言い、朝、アーサーが起きた時、困らないようにしておくからとも言っていた。 「ドーキンってどういう意味だったんだろう……ってまぁ良いか。確か、絢菜(アヤナ)って人がご飯を持ってきてくれるからそれを食べて、食べ終えたら、胤(イン)って人の店に行けって言ってたかな?」  アーサーはクリスと旅行へ行った時、聞いた布団の畳み方で布団を畳む。すると、やや騒がしい……いや、元気な女性の声が聞こえる。 「アサくんー、おはよー!!」  金髪のくるりと巻いた美女が湯気と良い匂いをさせたお膳を持って、剤の庵に入ってきた。

ともだちにシェアしよう!