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第11話
「アーティー君とリモートで会った日、俺はすぐ眠くなって、寝てた。そしたら、次、起きた時には胤君の家の中で横になってて」
どうやら、夏迫はアーサーよりもひと足先にこの讃に来ていたらしく、早朝、胤が仕入れをしようと店の前へ出て、倒れているところを発見されたという。
「三徹してたからなぁ……ちょっとやそっとじゃ起きなかったと思う。まぁ、それで、俺はこの世界じゃあ、家も金もないっていう話になって、胤君の師父さんと奥方さんが落ち着くまでうちで働かれては? って言ってくださったんだ」
夏迫にとっては行き倒れていたところを救って、宿屋の世話もしてくれた一宿一飯どころではない恩義もあり、二つ返事で夫妻の提案を了承したらしい。
「幸い、雑芸員なんて職業も少しは生きたのかな? 最初は胤君も俺に対してあんまり良いイメージを持ってくれてなかったんだけど、認めてきてくれてるんだと思う」
夏迫が胤と出会って、まだ間もなくはあるが、今では貴殿からジュンと呼び、さらに高度な目利きや高価な品の取り扱いを任せてくれるようになったという。
「……」
生き生きと自らの近況を語る夏迫に、アーサーは何とも言えない、よく分からない気持ちになる。
「あ、アーティー君。咽喉、渇いてない? 厨でお茶でももらってくるよ」
夏迫がちょっと待ってて、と部屋を出ていく。
アーサーは先程、感じたよく分からない気持ちを紛らわせるように窓の方へ向かう。
いつの間にか、空は暮れ出していて、提灯の火が仄かに浮かび上がるように照らされた讃の町が美しく広がっていた。
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