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第18話

「あとぅし……あとぅしじゃん!」  アーサーは行燈を持って、剤の庵に現れた夏迫に驚きつつも、庵の中へ招き入れる。驚きはしたが、昨日、ここが異世界にも関わらず、夏迫と出会ったことを考えると、今はまだ同じ世界の、同じ町にいるのだし、大して驚くことでもない。 「もしかして、薬ってあとぅしが飲むんじゃなくて、雑貨店に置く用とか? それか、誰かに取りに行くように頼まれたかとか?」  アーサーは一瞬、夏迫の体調が悪いのでは、と勘繰ったが、見ている分には夏迫は草臥れてはいるものの、どこかを痛めているとか何かを患っているだとかは感じられない。 「あ、誰がどう使うなんて関係ないよね。僕は剤に薬を取りにきた人に薬を渡してって言われただけなんだから」  何も言い出さない夏迫に、アーサーは様々に言葉を投げたが、最後はあっさりとした言葉とともに剤から預かった薬を渡す。  生成りの小袋には黒柿で染めた紐がしっかりと結びつけられていて、夏迫は何を言うでもなく、袋を見つめる。  それにより生じる少しだけ重い沈黙。  アーサーとしても、夏迫を追い返したい訳ではないが、夜は刻々と更けていく。この讃の治安は16年前の紛争の頃と比べると、かなり良くなったと剤は言ってはいたが、今夜はいつも以上に他所の町や国から様々な種類の人間が讃へ入ってきているのだ。  剤から留守を任されている以上、表の海老錠をかけられる鍵を持っているとは言え、施錠をして、夏迫を鶴竹まで送り届ける訳にもいかなかった。 「あとぅし、そろそろ本当に暗くなるから帰った方が良いよ。他にも何か、用事があるなら明日、また明るくなってから……」  アーサーはあくまで夏迫を心配する体で、夏迫を宿へと帰そうとする。  だが、夏迫は帰ろうとしないばかりか、アーサーに呟いた。 「アーティー君は今でもあの日のようなことを俺にしたいと思っている?」

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