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夜明けの華 10
◇◇◇◇◇
最寄り駅は都心の中でも一際大きなターミナル駅だ。日中夜を問わず、常に人波で溢れている。
蓮は目ざとく肇の姿を見つけると、距離を保ちながら後をつけた。
(お友達、ねえ)
制服を身に付けてはいるが、遠目からみても身だしなみが奇抜な男女と合流し、楽しげに会話を繰り広げている。
楽しそうに見える肇の様子が、蓮に違和感を持たせた。
肇達の行動は、欠伸が出る程に退屈で、つまらないものだった。
ゲームセンターではしゃぎ、ファーストフード店でくつろぐ。場所をかえ、またくつろぐ。日が暮れる頃にはいつの間にやら全員が私服に着替えていた。ライブハウスの中へ入る手前で、蓮はようやく肇の肩を掴んだ。
ぎょっとした表情で振りかえった肇に笑顔を向け、「一日よく遊んだな」と一言添える。
「なっ、いつから後をつけてたんだ、このっ」
蓮は振りあがった拳を制して、肇の額を指で弾いた。
「俺はきみの保護者代理を請け負っている。ふらついている未成年を迎えに来たんだ、優しかろう」
蓮が抵抗する肇の腕を掴み引き寄せると、傍観していた仲間達が口々に声をあげた。
「誰このおっさん、肇を連れて帰る気かよ」
「俺達の金づるなのに」
「馬鹿、金づるとかいうなよ、友達なんだから」
ぎゃははと笑う子供達相手に、蓮は苛立ちかけた気持ちを抑え、暴れる肇の腕を強引に掴み、その場をあとにした。
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