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夜明けの華 12
だが自分は一人に慣れる前に、独りに為らざるをえなかった。
幼い自分にとってそれは、とても辛いものだった。
肇の部屋の扉をノックしたが、返事がない。
「肇くん、入るぞ」
声をかけると、入るなと返事が返ってきた。
「起きているなら入るぞ」
言葉と同時に扉を開けると、机に向かっていた肇が勢いよく振り返った。
「入るなっつってんのに入ってくる大人がいるのかよ」
机に向かってはいるが、勉強している形跡はない。
膨らんだままの股間が目に入り、なるほどと目を細める。
「もうすぐテスト期間に入るだろう。勉強もせずに、余裕だな」
肇は蓮の言葉を無視して、床に落ちている漫画雑誌を拾い上げ、ベッドへと倒れこんだ。
「前回の結果は下から数えた方が早い順位だったな? あれはどうした、わざと落としたのかな? きみの成績の記録を小等部から拝見したが、ずっと上位を保っていた。凄いじゃないか」
「人の事を勝手に調べたのかよ」
「俺が調べたわけじゃない、きみの父親である社長からいただいた資料にかいてあった」
気持ち悪い事してんじゃねぇよと吐き捨てるように言い放ち、肇は蓮に背を向けて寝転んだ。背中を丸めた後姿は、あどけなさの残る子供だ。蓮は自然と頬をゆるませた。
「肇くん、俺とゲームをしないか」
「いやだ」
「きみがきちんと勉強をして、今度のテストで成績を戻せば、勉強した分だけ、俺はきみに性教育を指導してあげるよ」
一瞬間を置き、「は?」と顔を向けた肇に、蓮はニコリと微笑んだ。
「やる気になるゲームだろう? 例えば、ほら」
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