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理不尽な恋 16(夏樹)
夏樹は、ゴロンと横を向くと、片肘をついて頭を持ち上げ雪夜を眺めた。
――なつきさんも……すきなのかもって……そんなはずないの……に……
冷静になって、雪夜が泣く前に呟いた言葉を思い出してみる。
も……ってことは、雪夜も俺のこと好きなのか?
その前は吉田に嫉妬しているようなことも言ってたし……
あれ、じゃあ何で泣いたの?
泊まりたくないのとどう関係するんだ?
わからないことだらけだ……
でも……
わからないことは本人に聞くとして、少なくとも泣いた後、夏樹に抱かれるのは嫌がってなかった。
嫌われてはない……ってことだよな?
知らず知らずのうちに頬が緩んだ。
***
酔った勢いで雪夜を襲った俺が、本気で好きになったなんて言っても、雪夜は信じないかもしれないけど――
雪夜の目尻に残る涙を指で拭い、頬から顎にかけてスッとなぞった。
この肌を他の誰にも触らせたくない……
あの笑顔を俺だけに向けて欲しい……
自分がこれほど独占欲が強いとは知らなかった。
それにしても……とっくに恋に堕ちていたのに、吉田に言われるまでそのことに気付かなかったなんて……
自分の鈍さに呆れて、寝転んでいるにも関わらず眩暈がした。
***
恋は気まぐれで、ある日突然足元に穴が開くように、ストンと堕ちるものらしい。
一度堕ちてしまえば、後はもっと深く深く堕ちていくだけだ。
そこに好きな相手も一緒に堕ちてくれるかは、わからないけれど――
ふっ、と笑うと、雪夜を優しく抱き寄せて、好きだよ、と囁いた。
「……ん……」
腕の中の雪夜が無意識に夏樹に擦り寄る。
こんな何気ない仕草のひとつひとつが可愛くてたまらなく愛おしい。
目を覚ましたら、もう一度、いや、何度でも伝えよう。
雪夜が信じてくれるまで。
――願わくは、いつか君が俺と一緒に堕ちてくれますように……
***
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