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理不尽な恋が終わる刻 2(雪夜)
「じゃあ、まずはそこからね。はい、ちょっと起きて」
「へ?」
夏樹は、額を離してベッドの上に起き上がると雪夜の腕を引っ張って向い合せに座らせた。
「この話題、毎回はぐらかしてたでしょ?お願いだからちゃんと理由言って。ここに泊まりたくないのは何で?俺が怖い?この部屋が嫌?俺と一緒にいたくない?」
夏樹が一息に問いかけてくる。
雪夜は短く息を吸い込んだ。急に動悸が激しくなる。息が苦しい……
あぁ……そうか……
今までのらりくらりとかわしてきたけれど、もう逃げられないってことか……
雪夜を見つめる夏樹の瞳が、ちゃんと答えるまで帰さないと言っている。
俺が避け続けていたことで、夏樹がそんな風に思うだなんて考えてもいなかった。
夏樹さんが怖い?この部屋が嫌?夏樹さんと一緒にいたくない?……そんなこと、あるわけがない……っ!
俺が泊まらない理由……泊まっちゃいけない理由……
それを話せばきっと夏樹さんは……俺のことを……許さない……
確実に夏樹さんとの関係は……終わってしまうだろう……
でも、言わなくちゃっ……これ以上ごまかすわけにはいかない……っ!
覚悟を決めて奥歯を噛みしめた。
「……夏樹さんじゃなくて、俺の問題です」
「雪夜の?どんな問題?」
夏樹が眉を少し上げた。
「それは……あの、そもそも何でそんなに俺に泊まっていけって言うんですか?」
俺が真実を話す前に、これだけは聞いておきたかった。
夏樹さんが俺に泊まっていけと言う理由は何なの……?
もしかしたら……夏樹さん……俺のこと……
「泊まっていって欲しいからだけど?」
夏樹がさも当たり前のように答える。
「だから、何で……俺に泊まっていって……欲しいんですか?」
無理やり恋人になってもらっただけなのに、なんでそこまで……
「……あのね、雪夜」
「はい……」
「俺それなりにモテるんだよね」
「……ぅえ?……あ、はい。そうですね……?」
予想外の言葉に、間抜けな声が出た。
夏樹がモテるのは知っている。
一緒に歩いていても、周囲の女の子の視線が夏樹に向けられているし、トイレや会計等で少し離れているその隙に、大概誰かに声をかけられている。
「だから、付き合った人数は多い方だと思うんだけど……」
「は……い……」
あ、これってもしかして……俺が事の真相を告げるまでもなく、別れ話なんじゃ……
胸がズキッと痛んで、ちょっと泣きそうになった――
***
「……初めてなんだよね、朝まで一緒にいたいと思ったのは」
「……ぇ?」
「雪夜が初めてなんだよ。こんなに一緒にいたいと思ったのは」
「……っ!?」
え、夏樹さんは一体何を言ってんの?
「だからね……あ~……」
夏樹が言葉を探すように少し上を見て頭を抱えた。
「ごめん、何かもっと気の利いたセリフを考えてたはずなんだけど……」
……っ、何その顔……!?
少しはにかんだ顔で雪夜を見る夏樹に、胸が高鳴った。
いや、ドキッなんてしてる場合じゃないからっ!!
「……好きなんだ。雪夜のことが」
「……ぁ、はい……ありがとうございます」
一番期待していた言葉なのに、夏樹の口から聞いた途端、なぜか冷水を浴びたような気持ちになった――……
***
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