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理不尽な恋が終わる刻 12(雪夜)

「―――というわけ」  お粥を食べて薬を飲んだ後、約束通り夏樹はいろいろと説明してくれた。  まず、今日は土曜日で、雪夜は昨日大学で佐々木や相川と話しをしている最中に熱でぶっ倒れたらしい。  そして、相川におんぶされて病院に行こうとしているところを大学の入り口で待ち伏せていた夏樹が見つけて、なぜかそこから夏樹が雪夜を病院に連れて行って更に夏樹の家まで連れてきて看病をしてくれていたらしい。  ん?待ち伏せ……? 「雪夜を奪う時に相川君とひと悶着あったから、佐々木君と相川君には俺たちのこと、いろいろと勘付かれたかも……」  いやいや、奪うって何!?……相川と何があったんだろう……勘付かれたって、どういうことなの……二人に会うのが怖い…… 「それにしても……雪夜、最近寝不足でご飯もろくに食べてなかったんだって?病院で、疲労と栄養不足で体力が落ちていたから風邪引いたんだろうって言われたよ」  夏樹は小さくため息を吐くと、雪夜の頬を両手で包み込んだ。 「こんなに(やつ)れちゃって……俺のせい……だよね。ごめんね」  確かに夏樹と別れたせいで心身ともにボロボロだったのだが、それは雪夜の自業自得なんだし、夏樹が謝ることじゃない。それに……  雪夜は頭を左右に振って、声を振り絞った。 「な゛……ん゛で……っ」 「あ~、何で俺がいたかってこと?」  うんうん、と頷く。 「雪夜に会いに行ったんだよ。本当はもっと早く行くつもりだったんだけど、ちょっと仕事が立て込んで残業が続いちゃってね……メールや電話をしなかったのは、直接会って話したかったからで……いや、違うな。雪夜に拒否されてたらって考えたら怖くてできなかった……直接行って捕まえないと、安心できなくて……でも、雪夜もそんな状態になってたんなら、もっと早くどうにかすれば良かったな……」  夏樹が、ちょっと気まずそうに首を掻いた。  夏樹さんが会いに……?直接捕まえて話したかったことって何?……あ、もしかして……やっぱり一発殴らせろとかっ!?  雪夜が考え込んでいると、夏樹が雪夜の顎を指で掴んで上に向かせた。  夏樹と視線が合う。起きてからちゃんと夏樹の目を見たのはこれが初めてだ。  あれ?何か……夏樹さんいつもよりも……華がないというかオーラがないというか……疲れてる?仕事忙しかったって言ってたし……  思わず夏樹の顔に手を伸ばした。 「な゛づ……ざ……んん゛……(ダイジョウブ?)」  声が出なかったので、囁き声で話した。ほとんど呼気音(こきおん)だったけど……通じたかな? 「ん、大丈夫だよ。俺は大丈夫」  夏樹が頬に触れている雪夜の手を握って、困ったように微笑んだ。 「あのね、雪夜……」  急に真剣な眼差しで見つめてきた夏樹に、そういえば、それどころじゃなかったんだ……と緊張して思わずゴクリと唾を飲み込んだ。  できれば……あまり痛くないのがいいんだけど……平手打ち?拳?どっちだろう…… 「雪夜、俺と付き合ってくれない?」 「(……ド……コニ……?)」  ここじゃだめなの!?あれか、倉庫裏とかっ、体育館裏的なやつ!?そんなにボコボコに殴られるの、俺……っ!? 「どこって……え、いや、だから……もう一度、恋人になってってことだよ」  雪夜の返答が意外だったのか、夏樹が戸惑っていた。 「……っ?」  ん?何でまた恋人?どういうこと……あっもしかして…… 「(セ……フレ?……ハイ!)」  身体だけの関係的なやつか……それでもいい……俺、それでも……夏樹さんの傍にいられるなら……  夏樹の服の袖を掴んで、うんうんと頷いた。  ノンケの夏樹さんがいつまで俺の身体に興味を持ってくれるかわかんないけど…… 「は?待て待て、ハイ!じゃないからっ!!何でそうなるの!?セフレで雪夜は満足なの?……俺は嫌だよ。そんなんじゃなくて、ちゃんと付き合いたい!」  え、ちゃんとって何?それって……それってつまり…… 「だから……俺は雪夜が好きなんだよ。俺はこれからも雪夜と一緒にいたい」 「(デ……モ……オレ……)」 「ほら、ここで元気よくハイ!でしょ?」  ハイって言いたいけど……  素直に返事が出来ない雪夜の様子に、夏樹が思案を巡らせるように天を仰いだ。 ***

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