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理不尽な恋が終わる刻 13(雪夜)

「う~ん……何て言えばいいんだろう……そうだなぁ……雪夜が嘘ついてたとか騙してたとかは、ぶっちゃけ俺はどうでもいい」 「はっ?」  待って、どうでもいいって……よくないでしょ!?だって俺は…… 「あのね、雪夜はたぶん俺がノンケだってことを気にしてるんだろうけど、俺男抱いたの雪夜が初めてじゃないよ」 「っ!?」 「学生時代に……まぁ……どうしてもって頼まれて何人か……ね。所詮セックスなんて性欲処理でしかないんだから、好きじゃなくてもできるんだよ。雪夜に会うまでの俺はそういう奴だったんだ」  夏樹さんが俺以外にも男を抱いたことがある……?その事実は衝撃だけど、それはつまり、夏樹さんはバイってこと?いや、好きじゃなくてもできるってことは、男は好きじゃないってことだから……じゃあ、やっぱりノンケか…… 「だから……自分から抱きたいって思ったのは雪夜が初めてなんだよ。だいたい、俺は、多少脅されたくらいで大人しく言いなりになるほどヤワじゃないよ。ホントに気に入らなかったら、徹底的に相手の弱点を握って、逆に脅し返すくらいのことは余裕でする」  夏樹が、たまにベッドの上で見せるあのドS顔で笑った。  あ、うん……その顔の時の夏樹さんなら……それくらいやってそう……かも? 「雪夜にそれをしなかったのは、雪夜と一緒にいるのがイヤじゃなかったからだよ。それにいつも手を出すのは俺からだっただろ?あれは全部俺の意思でやってたんだよ」  確かに、雪夜からそういう行為を強要したことはない。  ただ、夏樹は優しいから、恋人らしいことをしなきゃと思ってしてくれていたのだとばかり…… 「雪夜は、俺とするのイヤだった?本当の恋人でもないのに、俺に抱かれるのは苦痛だった?」 「ぞん……ことっ゛……っ!ゲホッ……」 「あっ、ごめん、俺が喋らせちゃってるよな。ん~と……書く?」  無理やり声を出そうとしてまた咳き込んだ雪夜に、夏樹が慌ててメモ用紙とペンを渡してきた。 『イヤじゃなかったです。うれしかったです』 「そか……良かった」  メモを見ながら夏樹がホッとした顔で微笑む。  夏樹さんの意思で俺を抱いてたってことは……夏樹さんは本当に俺のこと……好き……なの?恋愛的な意味で?  じっと見つめる雪夜の視線に気付いた夏樹が、隣に座る雪夜をチラッと見て、また視線をメモに戻すと、ポツリと話し出した。 ***

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