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理不尽な恋が終わる刻 15(雪夜)※
夏樹の雰囲気が変わった……そんな気がした。
雪夜が背後を窺おうとした瞬間、夏樹に頭を押さえられ、顔を動かせなくなった。
何?なんで!?……夏樹さん怒ったのかな……どうしよう……
何が起きたのかわからず、ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。
その時、首筋にピチャッと生温かいものが触れた。
恐怖、不安、驚愕が入り混じるゾクゾクとした感覚が全身を駆け巡り、身体が少し跳ねた。
チュッというリップ音が聞こえて、さっきのは夏樹の舌だったのだと気付く。
「っ!?」
少し湿ったその肌を痛いくらいに強く吸われて、雪夜の背筋から腰にかけて電気が走った。
口唇が離れる瞬間、夏樹の熱い吐息がかかる。
少しずつ場所を変えながら何回も繰り返されるその行為に、徐々に雪夜の身体が熱くなってきた。
最初は声を出さないように歯を食いしばっていたのだが、頭の奥がフワフワしてきて力が抜けてきた。
「ぁっ!……なつ、き……さ」
「ん?ちょっと声マシになったね。良かった」
あ、ホントだ。
我慢が出来なくて思わず声が漏れたが、多少掠れてはいるものの、先ほどよりは声が出るようになっていた。
いや、今はそんなことよりも……
無駄に爽やかな夏樹の声が……なんというか怖い……
「じゃあ、雪夜の善 い声が聞けるね」
そういうと、夏樹の手が雪夜の股間に伸びてきた。
「えっ、夏樹さん!?……っ!!」
「雪夜は首筋にキスされるだけでこんなになるんだ?エロイなぁ……」
夏樹が含み笑いをしながら雪夜の耳元で囁くと、耳たぶを甘く噛んだ。
「ぁんっ!!」
……ぅわっ、今ので完全に勃っ……絶対夏樹さんわざとだぁああああっ!!俺が耳弱いの知ってるくせにっ!!
「やっ……手……触っちゃ……だめっ」
夏樹の手から逃れようと腰を動かすが、上にのしかかられているので逆に夏樹の手に擦り付ける形になってしまう。
「ん?心配しなくても抜いてあげるよ。俺の責任だし……ね」
そういうと、下半身の重しがなくなりグイッと腰を持ち上げられ、気が付いたら雪夜は四つん這いになっていた。
え、待って、何この体勢……っ!?
夏樹とする時はいつも顔の見える体勢だったので、初めての体勢に戸惑う。
床につく手が小さく震えた。
「ぁの……夏樹……さん?」
「なぁに?」
夏樹が、いつもの優しい声音で背後から覆いかぶさってくる。
背中越しに感じる夏樹の温もりと重みにホッとする。
片手を床について、全体重が雪夜にかからないようにしながら、もう片方の腕で雪夜の手の震えがなくなるまでしばらく抱きしめてくれた。
「雪夜、こっち……」
「……んっ」
雪夜が落ち着いてきたのを見計らって夏樹が軽く雪夜の顔を横に向かせると、斜め後ろから口唇を重ねてきた。
角度的に正直キツイ。
顔を横に向けているせいで首も痛いし、いつも以上に苦しくなるのが早い。
だが、口腔内に入ってきた夏樹の舌がいつもと違う部分を刺激してきて……
「ぁっ……っん……」
なんだこれ……苦しいのに……気持ち……良い……
雪夜が蕩けてきたのを見て、夏樹がキスをしながら雪夜のソレをしごきだした。
「……っ!んぁっ、なつ……っさ……!」
夏樹は大きな手で包み込むと器用に先端を弄りながら絶妙な力加減で刺激してくる。
夏樹と別れてから、自分で自分を慰める時に、この手を思い出しながらしてみたが、こんな風に気持ちよくはならなかった……
「待っ……夏樹さんっ!ちょっ……放しっ……て……っイ……きそうっ……!」
「イっていいよ」
「っ……んやっ……下……汚れちゃ……う」
いいよと言われても、このままだと、カーペットが汚れてしまう……
「手で受けるから大丈夫」
そういうと夏樹が雪夜の耳の穴に舌を突っ込んできた。
「ひゃぅっ!ぁあ゛あアっ……ソレっ……ダメっぇえっ……っっっ!!!」
耳の中で熱い舌が動く度に、ザリザリと音がする。
夏樹がよく行為の最中にしてくるので、それが脳に直接響いてくると後ろに挿入られている時のことを思い出して今も挿入られているかのような錯覚に陥りそうになる。
ダメだ……気持ち良すぎてもう……
「雪夜、イって」
「もっ……イっく……っ……んん゛っっ!!!」
夏樹に囁かれた瞬間、目の前が真っ白になって、夏樹の手の中に自分の熱をぶちまけていた……
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