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どんなに暗い夜だって… 1-6(雪夜)

 雪夜が固まっていると、夏樹が肩に手をかけて、くるっと雪夜を振り向かせた。 「うん、なぁに?」  夏樹が雪夜の頬を指で撫でた。   「俺……俺は……ぎゅって……して……もらいたい……」  夏樹の優しい微笑みや柔らかく響く声にほっとして喉の奥に何だか熱い塊がこみ上げてくるのをグッと堪えると、言葉を絞り出した。  夏樹は一瞬目を丸くしたが、クスッと笑うと、 「いいよ、おいで」  両手を広げて雪夜を抱き寄せ、いつもよりも力強く抱きしめてくれた。  夏樹の腕の中で少し肩の力が抜けた。  なんでこんなに心地いいんだろう……  雪夜が夏樹の胸に寄り掛かったその時、 「よしよし、大変だったね。一人でよく頑張った」  夏樹が先ほどまでの少し不機嫌な声とは違って、甘くて包み込むような声で囁くと、雪夜の髪を優しく梳いた。  待って待って……今それは……ダメだって!!! 「夏樹さ……っそれ今しないでくださぃぃ……」  夏樹の服をぎゅっと握って、胸元に顔を擦り付けた。 「なんで?」 「だって……」  今そんなにされると……俺…… 「泣いちゃう?」 「……っ……」 「いいよ、わざとだから」  夏樹が少し意地悪い顔で微笑む。 「っ!?……ひど……っ……」  わざとって何でですか!? 「こうでもしないと、雪夜なかなか本音言わないからね……もう泣いていいんだよ」  どうやら、まんまと夏樹の策にハマってしまったらしい……  ひどく優しい夏樹の声と、髪を撫でる手の温かさに、それまで張りつめていた糸が切れた。  ずっと我慢していたものが関を切って溢れ出す。 「なつきさ……っ……ふぇっ……っく……っ、おれっ……ほん、とはっ……こわかっ……ヒック……なつ……きさんに、会いた……かっ……っ」 「俺は、迎えに行ってもよかったんだよね?」  うんうんと何度も頷く。  変な女に襲われた時も、警察署で経緯を説明している時も、ずっと心の中で呼んでいたのは夏樹の名前だった。  不安で怖くて、早く夏樹に会いたかった。この腕で抱きしめてもらいたかった…… 「全くもう……素直じゃないんだから。俺にまでそうやって強がるの止めてくれるかな?意地っ張りなところも好きだけど、本気で頼られてないのかと思ってちょっと傷ついたし……」 「……っごめ…っさ…っ」 「……うん、俺も意地悪しちゃってごめんね」  夏樹が雪夜の頭に頬を擦り付けた。  それから、雪夜が落ち着くまでずっと、抱きしめて背中を撫でてくれていた。 ***

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