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どんなに暗い夜だって… 1-7(雪夜)

「……ぁの……服……ごめんなさい……ズズッ」 「気にしなくていいから、一回顔洗っておいで」 「……はぃ」  ようやく落ち着いた頃には、夏樹の服は雪夜の涙と鼻水でドロドロになっていた……  あぁ……夏樹さんのシャツが……  顔を洗って戻ると、夏樹が服を着替えていた。 「大丈夫?」 「……はい」  気まずい……  あれだけ強がっておきながら、こんなに号泣してしまうとは……  夏樹はボーっと立ち止まっていた雪夜の手を引いてベッドに腰かけると、そのまま膝に抱き上げた。 「ちょっと落ち着いた?」 「……はい、すみません」 「ん~……今から『すみません』と『ごめんなさい』は禁止ね。それ言い出したら話が進まないから」 「すみま……ぁっ……」  さっそく禁止ワードを言ってしまい、口を押える…… 「あ~あ、早すぎでしょ」  夏樹が苦笑しながら、雪夜の手を退けて口唇を重ねてきた。  軽く重ねられた口唇が小さくリップ音を立てて離れる。 「雪夜はね、もっとワガママ言っていいんだよ。俺のことを気にし過ぎて、いつも我慢しちゃってるでしょ?でも、寂しいとか、傍にいたいとか、さっきみたいにギュってしてほしいとか……言ってくれた方が俺も嬉しい。それに、何でも一人で抱え込んじゃダメって前にも言ったよね?」 「……ぜ……善処します……」 「それから、今回みたいな厄介なことに巻き込まれた時は、すぐに俺にも話して?佐々木君から聞かされた時、俺ホントに……心臓止まるかと思ったんだから……」  夏樹が、ちょっと泣きそうに顔を歪めた。 「ごめっ……んっ」  雪夜が禁止ワードを言った瞬間、夏樹が口を塞いでくる。先ほどよりは少し長めの口付けだった。 「言うと思った」  口唇を離すと、夏樹が悪戯っぽく笑った。 「ところで、雪夜」 「はい?」 「一緒に暮らそうか」 「……」  ん?今この人なんて言っ…… 「おーい、雪夜~?聞いてる?」  言葉の意味が呑み込めず固まってしまった雪夜の目の前で、夏樹がひらひらと手を振る。 「……なんっ……え、一緒にって……」 「うん、一緒に。同棲しようってこと」 「同せ……だって、だって……それは結婚前の男女が一緒に住むことで、俺と夏樹さんは男同士だし、同棲じゃなくて同居っていうか、でも恋人同士だから同棲になるのかもしれないけど、いやそんなことより一緒に住むって夏樹さんと一緒にっ!?」 「ぶはっ……っっっあははは」  混乱している雪夜を見て、夏樹が噴き出した。 「ぇ……なんだ冗談か~。からかわないでくださいよ、もう!」 「ちが……っっははは…ちょっと待ってっっっっくっはははっ」  夏樹はよく笑う方だが、ここまで爆笑しているのは初めてみたかもしれない…… 「あ~……腹痛い……」 「笑いすぎですよぉ……」  夏樹の冗談を真に受けた自分が恥ずかしいが、こんなに笑ってるところを見ることができたのだから恥をかいたかいがある…ということにしておこう。  それに、おかげで今朝の嫌な出来事が一瞬吹き飛んだ。 「ごめんごめん、いや、まさかそんなにテンパると思ってなくてさ。あ、冗談じゃないよ?」 「いやもうそれはいいですから」  雪夜、と夏樹が笑いを引っ込めて雪夜の顔を見た。 「冗談じゃないよ。本気だから」 「……ぇ、あの……」  急に真剣な顔になったので、ドギマギしてしまう。 「今回のことはもちろんだけど、前に雪夜の看病した時から、ずっと考えてたんだ。一緒に住んでいれば、何かあってもすぐに気づいてやれるし、それに、今の状態だと金曜しか会えないけど、一緒に住んでればお互い急に予定が空いた時とかいつでもデートできるし……まぁ、結局は俺がもっと一緒にいたいだけなんだけどね。どうかな?」  そんなの俺だって一緒にいれたら嬉しいけど、でもでも…… 「あの……ちょ……ちょっとだけ考えさせて!!!」  夏樹の視線を回避するべく俯いた。  視線を合わせると夏樹の瞳に吸い込まれて、勢いで頷いてしまいそうになる…… 「うん……それはいいけど……雪夜今は家がない状態だからタイミング的にもちょうどいいと思うんだけど……すぐに返事できない理由はなに?」  いや、確かにタイミング的にはいいのかもしれないよ?俺的にも、夏樹さん的にも……でも……俺…… 「あの……絶対に笑わないって約束してくれますか?」 「ん?うん、笑わないよ」  佐々木にも、夏樹さんにはちゃんと話しておけって言われたし……いつまでも隠しておくわけにもいかないし……  雪夜は俯いたまま大きく息を吸った。 ***

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