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どんなに暗い夜だって… 2-1(雪夜)
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休み明けには地獄が待っている……
日本人が子どもの頃から「休む」という行為に消極的な最大の原因はコレではないだろうか……
休むことにより心身の疲れは癒されたはずだが、その癒しを一瞬で吹き飛ばしてしまい、むしろ休む前よりも疲れる結果になるという……
そう、休み中に溜まりに溜まった仕事や宿題の山だ。
そして今……俺の目の前にもノートやプリントの山が――……
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「まだこんなにあるぅぅうう~~~……」
雪夜はペンを放り投げ、両手で頭を抱えた。
「雪ちゃん、諦めてそれもう、コピーしちゃえよ。全部書き写すのは無理だろ~?」
雪夜の隣で一緒に佐々木のノートを書き写している相川がペンを回しながら笑う。
相川は休まず講義を受けていたはずなのだが……
「ぅ~……でも、あの教授ノート提出した時にコピーしてたのバレたら単位くれないし~」
「俺なんか、コピーしまくってるぞ?大丈夫だって、内容全部チェックするわけじゃないんだから、コピーしたやつを上手いことノートに書いたみたいに貼っておけば……」
「相川って……そういう小細工だけは上手いよな……」
「そりゃもう、俺は小学生の頃からみどりちゃんに宿題写させてもらってたから――」
「みどりちゃん言うなっ!!!」
佐々木が丸めたノートで相川の頭を叩いた。
佐々木の下の名前は「翠」と書いて「あきら」と読むらしい。
大抵は「みどり、すい」と読まれるので、しょっちゅう女の子と間違われていたらしく、それがコンプレックスになっている。
そのせいで、大学では自己紹介でも「佐々木」としか言わない。
雪夜も子どもの頃は容姿のせいで「ゆきよちゃん」と呼ばれることが多く、下の名前で呼ばれるのが嫌だったので、佐々木の気持ちはなんとなくわかる。
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