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どんなに暗い夜だって… 2-3(雪夜)
夏樹さんと同棲を始めてから、およそ3週間になる。
と言っても、せっかくの同棲は今のところ甘いイメージからは程遠いものとなっている。
それというのも、すべては雪夜のせい……
同棲生活初めての朝(というかもう昼だったが)雪夜が目覚めると、夏樹さんが隣にいた。
最初は寝惚けていたので、只々嬉しかったのだが、よく考えると平日の昼間なのに夏樹さんがいるのは変だ。
夏樹さんが仕事を休んだ理由、それは雪夜のためだった――……
***
目覚めた雪夜が風呂に入ろうとすると、夏樹さんが珍しく一緒に入ろうと誘ってきた。
寝惚けていたのであまり深く考えずに適当に受け流して脱衣所に行き、服を脱いで何気なく鏡を見た。
見なきゃ良かった……
夏樹さんがやけに一緒に入ろうとしていたのはきっとこれのせい。
これを見た俺がどうなるかわかっていたから――……
雪夜はそこに映る自分の身体に驚愕して思わず叫んだ。
首にはくっきりと手形の痣、腕や背中にはひっかき傷や打撲痕……
襲われた時のことがフラッシュバックしてきたところまでは覚えている。
夏樹さんによれば、俺はそのまま倒れたらしい。
それから、痣や傷が消えるまで雪夜は大学を休んだ。というか、行くことが出来なかった。
最初の2日間程は寝込んでいたのでまったく記憶にない。
起きられるようになってからも鏡を怖がったり、夏樹さんがいないと不安で泣いたりと見事にメンタルがボロボロだったらしいが、当の本人はうろ覚えだ。
痕が薄くなってきた頃、ようやく短時間だけ正気に戻るようになってきた。
しかし、一度糸が切れてしまった雪夜のメンタルはなかなか安定しなかった。
正気に戻っている時は、早くしっかりしなくては……と思うのだが、ふとした瞬間にフラッシュバックして動けなくなってしまう。
夏樹さんは、自分の不甲斐なさに落ち込む雪夜に、しっかりしなくていいと言った。
無理やり大丈夫なフリをしても余計に辛くなるだけだから、雪夜が自然に動き出せるようになるまでゆっくり休んでいいんだよと。
豆腐メンタルの時にそんなことを言われると……もうね……惚れちゃうよねっ!!!
いや、とっくに惚れてるけれども!!
そして、夏樹さんはそんな雪夜のために、ずっと家にいてくれた。
ひどい時だと、ぐずって夏樹さんから離れようとしない雪夜を抱っこしたまま仕事をしていたらしい……どこの幼児だよ俺……っていうか、甘やかしすぎでしょ夏樹さん!?
***
そうして夏樹さんに思う存分甘えた俺は、1週間程前にいきなり夢から覚めたかのように正気に戻った。
不安定だった時のことを夏樹さんから聞いて、自分の惨憺 たる状態に思わず舌を噛みそうになったのは言うまでもない。
仕事については、基本的にPCを使ってするから在宅ワークでも問題ないと笑っていたが、いつまでも夏樹さんに迷惑をかけるわけにはいかない。
だいぶ精神的に安定してきたからもう大丈夫だと夏樹さんを説得して、3日前から大学に出ている。
大学にいる間は、夕方夏樹さんが仕事終わりに迎えにくるまで佐々木と相川がずっと傍にいてくれている。
そう、雪夜はこの三人のおかげで今、何とかこのプリントの山と向き合うことができているのだ――……
***
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