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どんなに暗い夜だって… 3-4(夏樹)

「でも、毎日一緒にいるようになったらさ、やっぱり今までとはいろいろと印象とか変わったりしないか?」 「あ~……雪夜が思ってた以上に不器用だった」 「不器用?」 「うん、飯は俺が作るだろ?で、一応元気になってからは雪夜が食器を洗ってくれてるんだけど――……」 「あ、わかった!食器割りまくりとか?」  吉田が早押しのように机をベシッと叩いて、得意気に夏樹に人さし指を向けた。  その人さし指をペチンと軽く(はた)く。 「いや、食器を割ることはないな。でも、水浸しになる」 「水浸し?」 「洗う時に水を勢いよく出しちゃって、食器に跳ね返って服がびちゃびちゃになる。それを毎回。でも自分の服が濡れるだけで床とかは濡れてないのが凄いんだよな――……」 「それは……ある意味凄いな」 「しかも、雪夜的にはそれは当たり前らしくて、濡れてもそのうち乾くから大丈夫ですって……いやいや、目のやり場に困るっつーの……!」 「女の子ならともかく、男なんだから別にいいんじゃね?」 「あのなぁ……考えてもみろよ!自分の恋人が水に濡れてスケスケの服着て傍に寄ってきたら……ムラッとくるだろっ!!」 「お、おぅ……あ~、まぁあの雪ちゃんだしな……確かに……結構色っぽいよな……」  吉田が斜め上を見た。 「お前何想像してんだよっ!」  自分の恋人って言ったのに雪夜を想像すんなっ!  あ、そうか。こいつの場合は嫁だったわ……  他人に自分の恋人のあられもない姿を想像されるのはイラっとするので吉田の足に一発蹴りを入れる。 「後は……物への執着心のなさ……かなぁ……」 「執着心のなさ?断捨離(だんしゃり)が好きとか?」 「いや、そういうんじゃなくて――……」  あの後からしばらく雪夜が寝込んだので、雪夜の部屋の片づけは佐々木と相川に任せた。  大学に必要な物と、その他なんとか無事だったものを探し出して箱に詰めて持ってきてくれたので、雪夜が元気になってから確認してもらったのだが――……  たった2箱分になってしまった自分の持ち物を前に、雪夜の反応は「まぁ……仕方ないですね。PCのデータは外付けに入ってるし……他のはまた、必要に応じて買いますよ」とあっさりしたものだった。  そりゃ仕方ないと言えば仕方ないのだが……普通は自分の持ち物には多少なりとでも思い入れがあるだろうし、ぐちゃぐちゃにされたことに対して少なからず悔しがったり怒ったりするものではないだろうか――……  そんな中……雪夜が一番に箱から探し出し、唯一無事を喜んだのが……以前デートの時に夏樹がゲームセンターで取ってあげたキーホルダーだった。  高価な物は受け取ろうとしないので、形として残るプレゼントはそれくらいしかしたことがなかった……  俺には少しは執着してくれてるのかな……それとも、あのキーホルダーが気に入ってただけ? ***

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