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どんなに暗い夜だって… 3.5-6(雪夜)
頭の中で、自分だけという気持ちと、それが普通という夏樹の言葉がグルグルと回る。
雪夜が考え込んでいると、夏樹が雪夜の口唇をスッとなぞった。
「っ……」
さっきから、指で軽く触れるだけだ……もどかしくて夏樹を見つめた。
「ん?指いや?」
夏樹が口唇から指を離した。
違う、そうじゃないっ!!
「……して……」
「なぁに?」
「キス……して……ください……」
指がイヤなんじゃなくて、指じゃものたりない。
服の上から微かに触れるだけの指と言葉だけでイかされて……
イったのにまだ身体が疼いて熱くて……せめて……キスしてほしい……
自分からねだるのは恥ずかしかったが、頑張って声を振り絞った。
「キスか~、どうしようかなぁ。今日は雪夜が自分の性欲をちゃんと受け止められるように、話をしようと思ってただけなんだけど……」
え、キスしてくれないの……?
夏樹がキスを渋った瞬間、頭の中でブチッと音がした。
「あ~~~もぅっ!!!わかったからっ!!!受け入れますよっ!!俺は夏樹さんにめちゃくちゃに抱かれたいと思ってる淫乱ですよっ!!だからキスしてくださいお願いしますっ!」
気が付いたら怒鳴っていた。
「ちょっ……落ち着いてっ何でそんなヤケクソになってるのっ!?」
「やだっ!!だって、夏樹さんあれから抱いてくれないしっ、ようやく抱いてくれるのかと思ったら言葉だけだしっ、俺だけイかされてるし……もうやだぁ!!何の拷問なのこれっ!!」
自分でも何を言っているのかわからない。
とにかく、なんだかんだ言って夏樹が余裕な顔してるのとか、俺ばっかり下半身が疼いて、俺ばっかり欲しがってるのとか、なんでキスさえしてくれないのとか……いろいろと耐えられなくなって半泣きで夏樹を押し倒した。
「わかった、わかったからっ!!雪夜っ!!落ち着いてっ!!雪っ……ん」
雪夜の勢いに圧倒されている夏樹の口唇に、強引に自分の口唇を押し付けた。
自分から押し倒すのも、自分からキスをしていったのも、初めてだった――……
無我夢中で押し付けていると、夏樹がフッと笑って、雪夜の頭に手を添えキスをしやすいように位置をずらし、いつものように舌を絡め取ってくれた。
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