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どんなに暗い夜だって… 4-3(雪夜)
「え、バイト!?……っ熱 っ!」
夕食後、食器を洗いながら夏樹にバイトの話を切り出したら、食後のコーヒーを飲んでいた夏樹が驚いて持っていたコーヒーカップを落としかけた。
「は……い……って大丈夫ですか!?火傷 は!?」
相川も同じような反応してたな……と少し笑いかけたが、夏樹の手にコーヒーがかかったのを見てすぐに笑いはひっこんだ。
「あぁ、大丈夫。ちょっとかかっただけだから」
慌てる雪夜を手で制すると、床に零れたコーヒーを拭いて、コーヒーカップをシンクに持ってきた。
「ちゃんと手冷やしてくださいね」
「ん、そのままでいいよ」
雪夜が夏樹のために場所を空けようとしたら、夏樹が後ろから覆いかぶさるようにして手を伸ばしてきた。自分の手を冷やしながら、泡だらけの雪夜の手も一緒に洗い流してくれる。
「それで……どんなバイトなの?」
ついでにそのまま食器を洗ってくれるのはいいのだが、雪夜はシンクと夏樹に挟まれて動けなくなっていた。仕方ないのでそのまま話を続ける。
「えっと、別の学部の先生なんですけど、研究室の片づけの手伝いをするだけです。たぶん数回で終わると思うんですけど――……」
「研究室の片づけねぇ……」
「はい!ここのところ、俺に付きっきりで佐々木達あんまり飲み会とかに顔出してないから……まぁ、相川は俺が帰った後とかに飲み会に合流してたらしいですけど、佐々木は全然行ってないみたいで……だから、大学内でのバイトだったら、二人についててもらわなくても大丈夫かなって……夕方夏樹さんが来るまでなら、だいたい3~4時間だし」
「あぁ……」
「相川は人気者だし、飲み会でも盛り上げ役だから誘いが多いんですよ。佐々木も面倒見がいいし優しいから女子にも人気があって結構誘われるんです。俺はいつも二人が行く時に人数合わせでつれて行ってもらってた感じで……そういえばあの二人、モテるのになかなか特定の相手作らないんですよね~……まぁ、俺のお守なんてしてたら彼女作れないか……って、つまり俺のせいだ!?」
今更すぎるが、俺のせいだとしたら、二人に申し訳なさすぎる!!!
思わず頭を抱えた。
「あ~……あいつらに彼女がいないのは雪夜のせいじゃないと思うよ……俺が思うにあの二人……」
「え?」
「ん~……いや、まぁ……そのうちにわかるだろ。たぶん」
夏樹が何か言いかけて言葉を濁した。
ちょっと気になるけど、そのうちにわかるって言うなら、まぁいいか。
***
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