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どんなに暗い夜だって… 4-6(雪夜)※
「はい、終わり」
夏樹が最後の一枚を洗い終えた。
手際のいい夏樹にしては珍しく時間がかかった。
あ、俺が邪魔してたからか。っていうか、俺がここにいたからやりにくかったんじゃ……
雪夜は相変わらずシンクと夏樹に挟まれている。
「ありがとうございました。結局洗い物ほとんどしてもらっちゃった」
「手冷やすついでだからいいよ。あ、でも……じゃあ、何か代わりにしてもらおうかな~」
「はい!何しましょうか?お風呂掃除?お洗濯?」
雪夜が背中でもたれかかりながら夏樹を見上げると、夏樹がニヤリと笑いながら見下ろしてきた。
「ん~……俺の相手とか?」
「へ?」
夏樹は逆さまの顔のまま器用に口唇を重ねてきた。
逆さまになっているのでいつもとキスの感じが違う……
キスに夢中になっていると、いつのまにか夏樹と向い合せになっていた。
「ん、夏樹さ……っ……ちょっ……」
覆いかぶさって来る夏樹の勢いに押されて後ろに倒れてしまいそうだったので、夏樹の背中に腕を回した。
「キッチンってそそられるよね」
口唇を離すと、夏樹が愉 しそうに笑った。
「っ……何言ってるんですか……」
いくら疎 い雪夜でも、お年頃の男子の中に紛れていれば、いろんな会話がいやでも耳に入って来るので、さすがにそれくらいはわかる。
あれでしょ、よくAVとかであるシチュエーションのことでしょ?
でも、あれって裸エプロンとかじゃなかったっけ……?
ところで……裸エプロンってどういう意味なんだろ……裸とエプロン?裸に見えるエプロン?俺エプロンつけてないよ?いや、そもそも服着てるから裸でもないよ?
「だって、雪夜また服びしょびしょだし。どうせこれ脱がなきゃでしょ」
雪夜が裸エプロンについて真剣に考え込んでいると、夏樹がびしょびしょになった雪夜の服をツンツンと引っ張った。
今日は洗い物はほとんど夏樹がしてくれたはずなのだが、それでもなぜかお腹の辺りが濡れていた。
「ぬ、脱がなくてもそのうち乾くから大丈夫です!!」
「え~……でもそれだとぎゅってしたら俺も濡れちゃうんだけど?」
確かにそうだ……っていうか、さっき抱きついたせいで、もうすでに夏樹の服も少し湿ってしまっている。
「あ……えと、着替えてきま……ぁっ」
急いで着替えに行こうとしたが、夏樹の身体を押しのけようとした瞬間、雪夜の足の間に夏樹が足を割り込ませてきた。
「脱ぐんだから、着替えなくていいでしょ?」
あ、ヤバい……夏樹さんがちょっとSモード入ってる……?
「……は……い」
キスをしながら雪夜のシャツをたくし上げ、
「はい、ばんざーい」
と、愉しそうに脱がした夏樹が、胸や鎖骨を舐めながらグリグリと太ももで雪夜の股間を刺激してくる。
「ぁ……の……んっ……それ、やっ……」
夏樹に舐められるとゾワゾワしてくる。その上、股間まで刺激されて、なんだか身体が……
「ん?どれ?」
夏樹が耳を食 みながら聞いてくる。
せめて食むのを止めて喋ってぇ~――……
「だ……から……足……」
「ホントにいや?気持ちよさそうだけど?」
夏樹の言葉に顔が熱くなる。
「……気持ち……っいいけど……こ、こんなので感じてる自分がヤダ……」
夏樹さんの太ももがちょっと当たってるだけなのに……
「っあ~……それちょっとクるなぁ……」
夏樹が急に動きを止めると、パっと足を抜いた。抜く瞬間、股間をひときわ強く擦られて、背中を電気が走った。
「ひっ……っ!?」
「っと……大丈夫?」
股にあった支えがなくなって、雪夜がそのままズルっと座り込んだ。
「こ……腰……が……」
立ち上がろうとするのに、腰や足に力が入ってくれない……
これくらいで感じている自分が情けないやら、気持ちいいやら、疼くやらで瞳が潤んでくる……
そもそも、こんな場所で刺激してきた夏樹さんも悪いぃ~~!!
非難がましく夏樹を見上げた。
「腰抜けちゃった?」
夏樹が笑いを堪えながら聞いてくる。
「~~~っっ!!!誰のせいだとっ!?」
「う~ん、俺のせいだよねぇ。じゃぁ、ちゃんと責任取らなきゃね」
そういうと、夏樹が雪夜を抱き上げた。
「え、待って待ってっ!?俺まだお風呂入ってな……」
向かっている先はどう見てもベッドだ。
「ん、後で一緒に入ろうか。ごめん、俺がちょっと限界」
「げん……ぇえっ!?」
なんで限界!?夏樹さんさっきまで余裕だったじゃないですか!?――
***
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