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どんなに暗い夜だって… 4-8(雪夜)

「失礼しま……すっ!?」  今日は昼から講義が休講になったので、緑川の研究室にバイトをしにきた。  部屋の片づけなんて、すぐに終わるだろうと(たか)(くく)って来たのだが……研究室の扉を開けた瞬間、自分の考えが甘かったことを思い知った。  目の前には本やよくわからない置物が大量に山積みになっていて、床の上も足の踏み場がないほどにぐちゃぐちゃ……  え……まさか……これを片づけるの?  あまりの惨状に、思考が停止する。 「どうぞ……ん?あぁ、その声は確か……昨日声かけた子だよね。片づけに来てくれたの?」  一瞬、あの事件の時の自分の部屋を思い出したが、幸いにも発作が起きる前に緑川の声が聞こえたので、なんとか奥歯を噛みしめて深呼吸をした。 「あ、はい……えと……先生どこにいるんですか?」 「こっちこっち~っ!あ、足元に気を付けてね。上も」 「ぅわっ……え、どこを通れば……」  天井近くまで山積みになった本と足元に散らばった本、どうやって避けていけばいいのかわからない……っていうか、これ……いつ崩れてもおかしくないだろ…… 「あ~ちょっとここら片づけるから待って」  バサッバサッと嫌な音がしたかと思うと、案の定、次の瞬間目の前の山が崩れた。 「のわぁああああっっっ!!!!」 「ええええっ!?ちょっ……先生大丈夫ですか!?」 「……」  返事がない……  嘘でしょ!?まさか…… 「ふぇ~い……だいじょうぶ~……でもちょっと助けて~……」  瓦礫と化した本の山から、緑川らしき男の腕だけが出て来た。  良かった、生きてる……ホッとして、急いで上に乗っている本をどかしていく。 ***

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