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どんなに暗い夜だって… 4.5-4(夏樹)
いや、それよりも――……
「俺の顔見たら落ち着く?」
「……」
雪夜が、まだ気まずそうな表情のまま、コクリと頷いた。
え~なにそれ可愛い……けど……
「でも、この間、俺の顔は直視できないって言ってなかった?」
このことでは地味にショックを受けていたので、ちょっと虐 めてみる。
「っ!?あ……あれは……そうですけど……写真なら……」
「写真だったら見れるんだ?……ふ~ん……」
写真と生で何が変わるんだ?
思わず自分の顔を撫でる。
「……今どんなの撮ってたの?ちょっと見ていい?」
雪夜の目にどんな風に自分が映っているのか純粋に興味が湧いて、雪夜の携帯を開いた。
「ぁああぁぁ……っっ!!」
画面を隠そうとする雪夜の手を振りきってフォルダを見ると、夏樹の横顔ばかりが3枚入っているだけだった。
「……言ってくれれば正面向くのに。隠し撮りがいいの?」
「そ……そういうわけじゃ……ただその、横顔も好きっていうか、夏樹さんが眼鏡かけてるのとか珍しいから……カッコいいな~と……思いまして……はい……」
「あぁ、普段は必要ないからね。PC使う時だけかけてるんだけど……雪夜って眼鏡フェチなの?」
同棲を始めた頃にはしばらく家で仕事をしていたので、その時にもかけていたのだが……雪夜はほとんど夢の中だったので覚えていないらしい。
「え!?いや、フェチっていうか、夏樹さんがかけてるのが好き……いや、もちろんかけてなくても好きなんですけど、夏樹さんが眼鏡かけてるとちょっと雰囲気が変わるっていうか、できる男っぽくて……あれ?いや、っぽいっていうか、実際そうなんですけどっ……だからその……って、ちょっと笑ってないでこれ止めてくださいよぉおおおおおおっっ!!!!」
「ぶふっっっ!!!ごめっっ……あははっっ!!」
雪夜のテンパる姿が可愛くて、思わず噴き出した。
「もぉ~……携帯返してください……」
雪夜が口唇を尖らせて、手を出してきた。
その手を掴んで手前に引っ張る。
「ぇ……わっ!!」
「どうせなら、一緒に撮ろうよ。俺も雪夜と撮ったのが欲しい」
「えええ、一緒にですか?ぃやぃや、夏樹さんと並んでなんて撮れませんよっっっ!!!」
「え、何それ……ちょっと傷つくんですけど……」
まさかこの流れで拒否られるとは思っていなかったので、かなり傷ついた……
「あ、いやその……今のは夏樹さんがイヤってわけじゃなくて……俺みたいなのが夏樹さんと並ぶなんて恐れ多いというか……」
あ~……以前も一緒に撮るのは頑 なに拒んでたっけ……
「雪夜は俺と撮るのイヤ?撮りたい?撮りたくない?どっち?」
「撮りたくないわけじゃないですけど……」
「うん、本当のところはどっち?」
俯く雪夜の両頬を挟んで上を向かせ、顔を近づける。
「と……撮りたいです……っん」
これでもまだ撮りたくないと言われたら、多分泣いてたな、俺……
ホッとして、軽いキスをする。
「良かった。じゃあ、いっぱい撮ろうか!」
そこから撮影大会が始まった。
照れて恐縮する雪夜の笑顔を引き出すまでに、半時間はかかった。
俺の画像フォルダ、今日だけですごい増えてる気がする。
だって……イチャイチャするの久々だし?そりゃテンション上がるよね。
あの手この手で笑わせていたら、いつの間にかベッドに移動していた――……
***
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