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どんなに暗い夜だって… 4.5-5(夏樹)
「夏樹さん、もう無理っっお腹痛いっっやめっっっぁっん!!」
雪夜が身体を小さく震わせながら、悶える。
ちなみに、虐めているわけでも、エロいことをしているわけでもない。
写真を撮るために雪夜を笑わせようとしていたのだが、夏樹が触るとところどころ筋肉痛で痛がったので、今は撮影を中断してマッサージをしているのだ。
夏樹は至って普通にマッサージをしているだけなのだが、雪夜が筋肉痛と夏樹に触られることの快感とでオーバーヒートして……なぜか笑い出したのだ。
適度な痛みは快感と表裏一体だ。
特に雪夜はM気質なので、ハマるとは思っていたのだけれど……まさか笑いのツボにハマるとは……想定外です……
いや、確かにね、笑顔が撮りたくて笑わせようとはしてたけれども……なんていうか……コレジャナイ感が半端ない!!!
「ぁんっ!!ちょっ……ぁははははっ……やだぁ、そこ痛いぃ~っ……っははは……」
雪夜が泣き笑いになってきたので、一旦手を止めた。
「はぁ……はぁ……っ」
「大丈夫?」
ぐったりとして肩で息をしている雪夜が、虚ろな目で夏樹を見た。
「つ……疲れました……」
「笑うのって結構疲れるよね」
苦笑しながら雪夜の頭をポンポンと撫でた。
まぁ……これはこれで……雪夜の笑顔が見られたことにはかわりない……か?
***
「明日……お腹が筋肉痛になりそう……」
雪夜は、夏樹が頭を撫でると気持ちよさそうに瞼を閉じながらボソリと呟いた。
その内容に思わず吹き出した。
「んん゛!?あぁ、笑いすぎてってこと?」
「はっ!!もしかして……笑いまくったら腹筋割れる!?」
「ぶっ……っくく……ぁはははっ……なにそれ斬新すぎるっ……っっ!!」
笑って腹筋を割るとか、どうやったらそんな発想が出て来るんだ?
「え~……割れないですかね?夏樹さんってなんでそんなに綺麗に割れてるんですか?」
「あぁ、俺はたまにジムに通ってるし、後は……雪夜をしょっちゅう抱っこしてるし?」
身体を鍛えるのが趣味というわけではなく、どちらかと言えばストレス発散をしに行っているようなものなので、特に決めて通っているわけではない。
雪夜と同棲を始めてからは、雪夜を一人にしておけなかったというのもあって、ほとんどジムには行っていない。
手を出せなかった時に、ストレス(性欲)発散のために朝仕事の前にちょっと寄ったことはあるけど――……
最近は家の中でたまに腹筋をしたり、雪夜を抱っこしたりするくらいだが、意外と筋肉は落ちていない。
「俺ってダンベルだったんですか?」
雪夜がジト目で夏樹を見た。
「ジムで持ち上げてるのに比べたら、雪夜の方が軽いよ」
「ふぇ……!?え~……俺もジムとか行ったら腹筋割れるかなぁ……?」
自分のお腹をさすさすしながら雪夜が呟いた。
「腹筋割りたいの?」
「ん~……腹筋っていうか……俺ヒョロイから、もうちょっと力つけたいです。……せめて本の入った段ボール箱を軽々持ち上げられる程度にっ!!」
バイトで、不必要な本を入れた箱は緑川が持ち帰るので、ある程度箱がいっぱいになると緑川の車まで運んでいるらしい。
一応、台車を使っているのだが、台車に乗せる時と、車の荷台に乗せる時に持ち上げる。
部屋を片付ける作業も大変だが、一番はこの本いっぱいの段ボール箱の持ち運びのせいで全身筋肉痛状態になっているのだ。
「力をつけたいか~……本ってかなり重いからね?段ボール箱いっぱいに入ってたら結構な重さになるでしょ。あれを軽々持てるくらいまで鍛えたら、ムキムキになっちゃうよ?そんなことしなくても、重いものを持ち上げるのはコツがあるんだよ」
「コツ……ですか?」
「だからね――……」
別に見た目だけで好きになったわけではないので、雪夜がガテン系になろうが、おっさんになろうが、愛し続ける自信はある。
ただ……すぐにへばって呂律が回らなくなるのが可愛いし、適度に筋肉がついているから触り心地いいし抱っこしやすいし……今のサイズ感がちょうど腕の中にフィットして心地いい。
それに、雪夜の力が強くなってしまったら……重いものを持つとか、固い蓋を開けるだとか……そういう些細なことで頼ってくれなくなるじゃないかっ!!
このままでは夏樹の存在意義がなくなってしまう!
理由がめちゃくちゃしょぼいが、些細なことでも雪夜から頼ってくれるのは貴重なのだ。
完全なる夏樹の私利私欲のため、雪夜にムキムキになられては困るので、雪夜を持ち上げながら、重いものを持ちあげるコツを説明した――……
***
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