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どんなに暗い夜だって… 番外編-4(雪夜)
帰宅した雪夜は、買い物袋をテーブルに置いて時計を見た。
「今からなら、さすがに準備できるよね。頑張るぞ~!」
雪夜は腕まくりをしながらキッチンに立つと、佐々木に教えて貰ったことを思い出しつつ、メモを見ながら料理を始めた。
***
――昼過ぎから、徐々に空が曇って来た。
「雨……降りそう……」
天気予報をチェックして、ため息を吐く。
「夏樹さん濡れないといいけど……傘持ってたかなぁ……」
夕暮れ時に雨雲が広がり、一気に外が暗くなる。
遠くで雷鳴が聞こえた気がして、一瞬ビクッとなった。
失敗続きでまだ完成していないが、このままもし雷が近付いてきたら……料理どころではない。
雪夜は子どもの頃から雷が苦手だ。
遭難事故の際、真っ暗闇の中で聞いた雨と雷の音は恐怖以外のなにものでもなかった。
でも、雷はヘッドホンをして音を消してしまえば何とかなる。
それよりも怖いのは……
雪夜は、慌てて失敗作にラップをすると冷蔵庫に放り込み、火の元を確認してキッチンから離れた。
カーテンを閉めて、ヘッドホンをすると音量を大きくして好きな曲を流す。
ベッドの上でタオルケットを被って膝を抱えると、ふわっと夏樹の匂いがした。
相川と佐々木のおかげで楽しく過ごせたが、たった二日会えないだけで、自分でも驚くほど夏樹が恋しかった。
夏樹と同棲するまでは一人暮らしをしていたし、夏樹とは一週間に一回しか会ってなかったけど、それで満足だった。
もちろん、もっといっぱい会いたい気持ちはあったけど……
それなのに、一緒に住むようになってたった数か月で、二日会えないのが我慢できなくなってるなんて……
俺……夏樹さんに飽きられたらどうなっちゃうんだろう――……
***
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