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どんなに暗い夜だって… 番外編-5(雪夜)
同棲する前は、夏樹との関係は偽りだったから、それなりに覚悟はしていた。
それでも、別れた時は悲しくて、淋しくて、ボロボロになった。
今は……偽りじゃない本当の恋人同士。
夏樹は毎日のように想いを伝えてくれるし、雪夜を大切にしてくれているけれど、大切にされればされるほど、好きだと言われれば言われるほど、この関係はいつまで続くんだろうと不安になる。
雪夜には選択肢はない。
夏樹以外の人を好きになることも、身体の関係をもつこともない。
でも、夏樹には選択肢がたくさんある。
いつか、夏樹さんが俺以外の選択肢を選ぶ時がきたら……俺はちゃんと別れられるのかな……
夏樹さんの幸せを願ってるはずなのに、自分勝手にみっともなく泣いて喚 いて縋 り付いている姿しか思い浮かばない。
あの事件の時の女の人みたいに……
目を閉じると、自分に襲い掛かって来る女の幻影と自分が重なって見えた。
「ぅわっ!?」
その時、お腹に響いてくるほどの雷鳴が轟 き、我に返った。
何考えてたんだ俺……
そんなこと考えちゃだめだ!
だいたい、まずは嫌われないように飽きられないように努力しなきゃだろ!
うん、そうだ。今まで照れて俺からはあまり想いを伝えることがなかったけど、ちゃんと伝えなきゃ!
後悔だけはしたくない。
自分の気持ちを伝えて、家事もちゃんとできるようになって、えっちも……喜んで貰えるようにいろいろ勉強して、夏樹さんにもっと好きになって貰えるように頑張る!
それでもダメな時は……ダメな時は……ダメな……時は――……
きっぱり諦めるっ!
よしっ!
グッと手を握りしめて自分に気合を入れる。
そう、大丈夫。トラウマだって、少し前までは一人暮らしできるくらいまでマシになってたんだから、俺一人でも大丈夫!いつまでも夏樹さんに頼ってちゃダメだ!
子どもじゃないんだから、留守番くらい一人で出来るもん!
怖くなんかない!怖くなんか――……
この時雪夜は、雷に驚いて思考回路がぐちゃぐちゃになっていることにも気づかないくらい混乱していた。
心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなる……息苦しい……
ベッドの上で丸くなると、震える指先で携帯の画面に夏樹の写真を映し出した。
雪夜の隣で楽しそうに笑っている夏樹の顔にほっとして、少し気持ちが落ち着く。
大丈夫……もうすぐ夏樹さんが帰って来る……大丈夫――……
***
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