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どんなに暗い夜だって… 番外編-8(夏樹)
ようやく呼吸が落ち着いてきて、夏樹の腕を掴んでいた手が緩んだ。
「夏樹さ……っ……」
泣き止んでいた雪夜の目にまた涙が溢れて来る。
呼吸はもう大丈夫だな。
眉間の皺がなくなり、表情が少し緩んできたのを見て、夏樹も少し落ち着きを取り戻した。
「うん、ただいま。遅くなってごめんね」
ほっとして、雪夜に微笑みかける。
「夏樹さんっ!!」
雪夜が夏樹の首に腕を回してギュっと抱き着いてきた。
「よしよし、怖かったね。もう大丈夫」
「なつ…っおそっ……いぃいい~~~!!!夕方っ……帰るって……っっ」
「うん、ごめんね。電車が遅延しちゃって……」
雪夜がそんな風に夏樹に文句を言うのは珍しい。
発作のせいでまた少し不安定になっているようだ。
それもそのはずで、同棲してから雷が鳴ったことは何回かあったが、雷と停電のコンボは今日が初めてだったのだ。
よりによって俺が傍にいない時にっ!!
こういう事が起きた時に一人にしておきたくなかったから、佐々木の家に行くように言ってあったんだけどな……
「ん?雪夜なに持ってんの?」
タオルケットの中で雪夜が抱きしめていたものに光を当てる。
「あ……これは……その……ああっ!」
雪夜が気まずそうに片手で背中に隠そうとしたのを、さっと取り上げる。
……え、俺の服?なにそれ……可愛っ!?
それは出張の日の朝、脱いで洗濯カゴに入れたままになっていた夏樹の服だった。
***
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