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どんなに暗い夜だって… 5-4(雪夜)
「ぅ~……どうしよぅ……」
佐々木の家に遊びに来た雪夜は、ジュースを飲んで頭を抱えた。
「何が?」
佐々木が器用に中身を取り出しやすい形に袋菓子を開く。
何やらコツがあるらしく、何回か教えて貰ったが雪夜にはうまくできない。
「ねぇ、デートってどこに行けばいいの?何するの?」
「は?」
「あのね、今度夏樹さんとデートすることになったんだけど……俺さ、今まで金曜の夜しか会ってなかったから、食事くらいしか行ったことなくてね……」
「同棲してからも!?……あっ、やべ……」
二つ目の袋菓子を開けかけていた佐々木が、びっくりして思いきり袋を引っ張ったため、お菓子が飛び散った。
「いや、同棲してからは、日用品とか食料品の買い出しには出かけたりしてたよ?でも、今度は遊びに行こうって……遊びにってどこに行くの!?いや、行きたいって言ったのは俺なんだけどさ、デートスポットとかよくわかんないし……そもそもデートって何をするのかもわかんないし……それに、できたらあんまりお金のかからないところがいいんだけど……」
飛び散ったお菓子を一緒に拾い集めながら、もじょもじょと話す。
夏休みに入ってからは、緑川の部屋を片付けるバイト以外にも短期バイトをいくつかしているが、まだ給料は入って来ない。
よって、雪夜は相変わらず金欠だ。
「あぁ……う~ん、金のかからないデートスポットねぇ……」
「佐々木は今までどういうところに行ってた?」
「俺?まぁ、映画とかカラオケとか水族館とか遊園地とか……」
「水族館!?遊園地!?いいなぁ~楽しそう!あ、でもお金かかるか……」
どこに行っても、お金はかかる……ですよねぇ……
「デートなんだったら、夏樹さんが出してくれるんじゃね?っていうか、出すだろ。あの人なら」
「だから嫌なんだよぉ!ただでさえ出してもらってばっかりなのに、デート費用まで全部出してもらうとか、なんか……あ~~もう、なんで俺あんなこと言っちゃったんだろ~~~っ!!」
「何言ったんだよ?」
「ぅ~……テレビのクイズ番組でね――……」
***
デートをすることになったいきさつを話すと、佐々木が吹き出した。
「ぁははっ……そうか、ご褒美にデートねぇ……そりゃ夏樹さんびっくりしただろうな……」
夏樹さんがびっくりした?なんで?やっぱり……
「やっぱり言わない方が良かった……かなぁ?」
「いや?いいと思うよ?だって、雪夜は夏樹さんとデートしたいって思ったんだろ?」
「……ぅん……でも……やっぱりちゃんとお金貯めてから言えば良かった……お金ないくせにデートしたいとか……最初から自分で出す気ゼロってことだよね……俺最低だ……失敗しちゃった」
「失敗じゃないだろ。お前からデートしたいって言ってくれて夏樹さんは喜んでると思うぞ?雪夜はあんまり自分から言ったりしないけどさ、恋人にはいっぱい甘えたりワガママ言ったりして欲しいものだろ?」
佐々木が、しょんぼりと項垂れる雪夜の頭を撫でた。
「……佐々木は?」
「ん?」
「相川に甘えたりワガママ言ったりする?」
「え……あ~……俺は……どっちかって言うと、あいつがそういうの言ってくる方だからな……あいつが言ってきたら超ウザいし面倒だけど……」
「そうなんだ……」
「あ、いや、ウザいっていうのはあいつだからだぞ?それにウザいけど嫌じゃないからっ!俺とあいつは付き合いも長いから、お互い言いたいこと言い合ってきたし、恋人になってからもそれは変わらないっていうか……だから、雪夜も夏樹さんにもっといろいろ言えばいいと思うよ?」
珍しく佐々木が照れている……なんだかんだで、相川とはうまくいってるみたいだな。
「俺、夏樹さんに甘えまくってるよ?」
「いや、雪夜のは甘えてるうちに入らねぇよ……って、まぁ、俺も相川に甘えるのは苦手だけど……」
その時、佐々木の電話が鳴った。
「あ、悪い…………チッ」
着信画面を一目見て、舌打ちをすると携帯をベッドに放り捨てた。
「え、出なくていいの?」
「あぁ、バカだからいい」
バカって……相川のこと?
もしかして、俺がいるから出にくいのかな?
「俺、外に出てようか?」
「あ~いや、そんなことしなくてもいいって!……はぁ、わかった出るよ」
佐々木がベッドの上で虚しく鳴り響く携帯を指先でつまむ。
恋人同士になったはずなのに、なんでそんなに嫌そうなんだ……?
「はい、もしもし?何だよ?……あ~今は雪夜が来てるから、お前の相手してらんねぇ……あ?うっせぇよ!どっちが大事って、そんなの雪夜に決まってんだろっ!?……はぁ!?いや、絶対に来んな!!ちょっおい、聞けっ!!!」
携帯に向かって怒鳴っていた佐々木が、また携帯をベッドに叩きつけた。
「相川なんだって?」
「え?いや、暇だから相手しろってうるせぇだけ。雪夜が来てるって言ったら、来るとか言って勝手に切りやがった……」
「相川も来るのか~。じゃあ、相川にもどこかいいデートスポットないか聞いてみよう!」
***
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