幼い頃は、暗闇のトラウマのせいで、夜出かけることが出来なかった。 　それに人の多いところに行くと、周囲の喧騒(けんそう)が山の中での木々のざわめきや姿の見えない生き物たちの鳴き声を思い出してパニックを起こしていたので、昼間でも人の多い場所には行けなかった。 　高校生頃になると、だいぶそういうトラウマはマシになっていたけれど、その頃には性癖の関係で友達を作れなくなっていたので、一緒に出掛けてくれる友達がいなかった―― ＊＊＊ 「――花火大会か。俺はいいけど、むしろ俺もいていいの？一年前からの約束ってことは、三人だけの方がいいんじゃないの？俺のことは気にしなくてもいいよ？」 「え……そ……んなことは……」 　夏樹に言われて、佐々木と相川を見た。確かに、一年前からの約束なんだから約束を優先して三人で行くべき？でも、夏樹さんも今週末にデートしようって言ってくれてたし……花火大会も今週末だし……夏樹さんとも花火大会行ってみたいし……えと、どうしたらいいんだろう…… 　考えがまとまらず混乱している雪夜を見かねて、佐々木が携帯を取った。 　テーブルの上に携帯を置いてスピーカーにする。 「佐々木です。すみません、雪夜が混乱してるみたいだから、かわりました。何言いやがりました？」 「え？いや、俺はいいけど、そっちの約束が先なんだったら、三人だけの方がいいんじゃないのって言っただけなんだけど……別に俺とのデートはいつでも行けるし」 「あ～……なるほど。え～とですね、雪夜は花火大会行くのも初めてなんですよ。だから、俺らとも行きたいけど、夏樹さんとも行きたいんだと思いますよ。雪夜めちゃくちゃ楽しみにしてて浮かれてるんで、四の五の言わずにOKしやがりください」 「なんなんだその日本語……って、花火大会も初めて！？……わかった。いいよ。で、何時にどこ？」 「え～と、花火大会の会場は人が多いから……ちょっと待って下さいね。おい、相川――……」 　三人でサクサク話を進めていく。 　デートも花火大会も初めての雪夜は、ただ、ボーっと見ていることしかできない。 　すごいな～……俺、場所とか聞いても全然わかんないや…… 　でも、とりあえず夏樹さんも一緒に行ってくれるってことだよね？良かった……っていうか、もしかして初デートでダブルデートはおかしいのかな？だから夏樹さん渋ったとか？みんな初デートはどうしてるの！？何が正解なの！？わかんないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！ ＊＊＊