113 / 715
どんなに暗い夜だって… 5-9(夏樹)
「……って言う感じで、今送ったのが、雪夜が夏樹さんと一緒に行ってみたいと思った場所です」
「ありがとう……っていうか、多くないか!?これ全部行ったことないの?」
「みたいですよ。子どもの頃はほとんど出かけられなかったって言ってたから。遠足とか修学旅行とかも休んでたみたいなんで、今度どこか一緒に旅行にでも行こうかなと思ってますけど。俺らだけで。」
「そうかぁ……いいね、いっぱい遊びに連れて行ってやってよ。恋人と友達じゃ同じ場所に行っても全然楽しみ方が違うしな……あ、相川にもお礼言っといて」
「え?あいつが何か?」
「ん?いや……うん、まぁちょっと……ね」
「夏樹さんとあいつが仲良くしてるとなんか気持ち悪いな……あ、そうだ。雪夜のことなんですけど――……」
「あ~……わかった。ありがとう」
雪夜がバイトに行っている間に、佐々木から雪夜が行きたいと言っていた場所の情報が送られてきた。
さすがに、佐々木は聞きだすのが上手い。
初めてのデートでどこに連れて行くべきか悩みまくった夏樹は、佐々木に連絡して雪夜の希望を聞き出して欲しいとお願いしていたのだが、まさか、こんなにも大量に情報が来るとは思わなかった。
もう、これ片っ端からデートスポットや観光スポットに連れて行けってこと?
いいけど……全然いいけど!!
だって、どこ連れて行っても喜ぶってことだよね?
夏樹は雪夜と一緒ならどこに行っても楽しいけれど、雪夜が楽しんでくれないと意味がない。
だから悩んでいたのだが、これ、悩む必要ないってことじゃないか!
お金は気にしなくていいって言っても気にしちゃうからなぁ……
とりあえず今年はあんまりお金のかからないところをチョイスしていくか……
「楽しみが増えたな~……」
ただ、こんなに行きたい場所があるのに、雪夜からは夏樹に何も言ってこないことが少し気にかかった。
行きたい場所が見つかったら教えてと言ってあったのに――……
やっぱり費用を気にしてる……?
でも、こういうところだとお金かからないと思うんだけどなぁ~……なんで行きたいって言ってこないんだろ……遠慮してるのか?
目的地や内容などを相手が指定してきて渋々デートをすることが多かった夏樹にとって、全ての予定を自分で立てるのはある意味初めてなので、少し戸惑いもある。
それでも、雪夜と行くことを考えると楽しくて、鼻歌混じりにデートプランを考えていた。
***
多少の違和感はあった。
でも、それについて深く考えるよりも、雪夜からデートがしたいと言ってくれたことが嬉しくて完全に浮かれてしまっていた。
後日俺は、違和感の正体にすぐに気づけなかった自分のまぬけさを呪うことになる――……
***
ともだちにシェアしよう!