119 / 715

どんなに暗い夜だって… 5-15(夏樹)

 花火の消えた夜空を淋しそうに見つめる雪夜に、 「さぁて雪ちゃん、今から楽しい肝試しが始まるよ~!!」  と、相川が明るく笑いながら肩を叩いた。 「……え!?肝試し!?」 「さっきの公園まで、来た道を無事に帰るという簡単な肝試しです!!」  相川が指差す道は、それはもう見事に暗闇に閉ざされていた。  そりゃそうだよな……いや、俺も夜になったらこうなるのはわかってたけどね? 「だぁ~いじょうぶ!!ライトはいっぱいあるから!!それに、雪ちゃんは夏樹さんがおんぶするし!!」  相川が親指を立てて、「それでいいだろ?」という風にチラッと夏樹を見た。  まぁ、夏樹もここに来た時からそのつもりだったけれども。  軽く手をあげて相川に了解の合図をする。 「え!?いやいやいや……あああああるくよ!?だだだだいじょうぶ!!!みんながいるし!!!!!」  花火が終わって少し冷静になった雪夜が、頬を引きつらせながら強がる。  そんな雪夜を横目に、佐々木と夏樹で手早く荷物をまとめると、相川と佐々木が荷物を持って、夏樹が雪夜を抱き上げた。 「ぅわっ!?え、夏樹さん!?」 「はい、それじゃあ、俺の代わりにライト持ってて?」 「ほら、これ雪夜の分のライトな」  佐々木が、夏樹に抱っこされている雪夜にライトを渡す。 「おおおおれ歩けますよ!?」 「うん、そうだね。でも俺が抱っこしたいの。今日は二人に雪夜のこと取られっぱなしだったからね。公園に着くまでは、独り占めさせてよ」 「ええええ!?」 「ほら、ちゃんとライト照らして?」 「あ、はい……」 「ちゃんと掴まってないと、落ちちゃうよ?」 「え、それはやだっ!!」  最初は照れて下りようと暴れていたけれど、歩き出して暗い道に入るとやはり怖くなったのか夏樹にしがみついてきた。  別に打ち合わせをしたわけでもないが、自然に相川と佐々木が夏樹と雪夜を挟むようにして縦一列で歩く。  雪夜に関してはこのメンバーはやたらと息が合うので、いちいち言葉にしなくてもいいからラクだ。    雪夜が怖くないように、相川が終始くだらない話をしては佐々木が後ろからツッコんでいたので、雪夜も夏樹にしがみつきながらも時々笑う余裕があった――…… ***

ともだちにシェアしよう!