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どんなに暗い夜だって… 5.5-7(雪夜)

 自分から舌をねじ込んだものの、その先どう動いたらいいのかわからず戸惑っていると、夏樹さんが続きを引き取ってくれた。  夏樹さんの真似をしてみようと思ったけれど、考えてみたら夏樹さんがしてくれるキスはいつも気持ち良すぎて、すぐに頭がフワフワになってしまうので、どんな風にキスをされているのか全然わからない。  今も、夏樹さんが舌を絡めてからは、頭の中が夏樹さんへの愛しさでいっぱいになって他に何も考えられなくて……  口唇が離れると淋しくて…… 「あ~もう……雪夜、だからその顔ダメだって。押し倒したくなるでしょ?」  夏樹が困ったような顔で笑うと雪夜の頬をペチペチと軽く撫でた。 「え……?」 「続きはまた夜にね」 「あ……はぃ……」  俺……どんな顔してたの!?そんなに、もの欲しそうな顔してたのかな……恥ずかしい……っ!! 「じゃあ、行こうか」 「あ、あのっ……夏樹さん、もう怒ってないんですか?」 「……ん?俺がいつ怒ってるなんて言った?」  雪夜の手を取って歩き出した夏樹が、少し眉を上げて雪夜を見た。 「え……だって、俺が……デートって気づいてなかったから……」 「俺は今日、楽しかったよ。雪夜がデートだと気づいてなかったとしても、雪夜と一緒に来れて、雪夜の楽しそうな顔が見れたし、俺自身も楽しめた。だから、俺は大満足だよ……それじゃぁダメなの?」 「……ダメ……?っていうか、そういうもの……なんですか?」  夏樹さんも楽しかったの?俺、全然デートっぽいことできなかったけど……いや、そもそもデートっぽいことってどんなことかわかってないけど……デートって一緒に行って、楽しかったらいい……の?そんな簡単なことだったの? 「そういうもんでしょ。それとも、雪夜は俺とはもう来たくないと思った?俺より佐々木君たちと一緒の方が良かった?」 「そ、そんなことないですよっ!!めちゃくちゃ楽しかったです!それに、俺もいつか夏樹さんと来れたらいいなって思ってたしっ!!……ぁ……」 「雪夜も俺と一緒に来たかったんだ?」  夏樹がやけに嬉しそうに笑った。 「あの…………はぃ……いつか来れたらいいな~って……だから俺バイトを…………ぁ?ああああっ、そうだ、俺今日のお金っ!!」  その時になって初めて、今日一日雪夜が何も払っていないことに気づいた。  気づくの遅すぎだろ俺っ!!どんだけっ!?  なんか今日の俺ボーっとしすぎっっ!!しっかりしなきゃっ!!! 「あ、もうすぐ電車来るね。さ、行こうか!」  夏樹が、不自然に腕時計を見て歩き始めた。 「ちょっと、夏樹さん!?水族館、いくらだったんですかっ!?俺、払ってないですよぉおおお!!?」  雪夜の声を無視して歩いて行く夏樹の服を引っ張る。 「……あのね、雪夜。デートなんだから俺に払わせてよ。学生同士なら割り勘とかするけど、歳の差がある場合は……あ~……そう!基本的に年上が出すものなんだよ」  夏樹が立ち止まりため息を吐くと、真面目な顔で雪夜に言い聞かせてきた。 「え!?そ……そうなんですか!?」 「そうなんですっ!(……ということにしておこう)」 「ん?何か言いましたか?」  最後に何か言った気がしたけど…… 「いや、何でもないよ?だから、雪夜は気にしなくていい。そうだなぁ……雪夜がいつか俺より稼ぐようになったら、その時は雪夜に(おご)ってもらおうかな」 「わ……わかりました!!!俺、頑張って稼げるようになります!!」 「うん、楽しみにしてるね」 ***

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