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どんなに暗い夜だって… 5.5-8(夏樹)
敗因は、風呂上りに雪夜の髪を乾かしながら今日撮った写真を見せたこと。
夏樹は胸元で寝息を立てる雪夜を見下ろしてため息を吐いた――
花火の後、雪夜が体調を崩したので今週は手を出すのを控えていた。
その上、今日は一日中、他の男の視線にヤキモキして、押し倒したいのを我慢して……
だから、帰ったら絶対思いっきり抱いてやろうと思っていたのに……コレだよ……
ぃや、そりゃね……写真を見せたのは俺だよ……?
写真を見ながら今日のことを思い出して話す雪夜は嬉しそうで、楽しそうで……連れて行って良かったな~って……
まさか、話疲れてそのまま寝るとは思わないだろっ!?
「ぅ……ん……」
夏樹の胸にもたれて眠る雪夜が、嬉しそうに微笑みながら身動 いだ。
雪夜、それはズルいって……そんな……幸せそうな顔して寝られたら……
「……大好きだよ……」
夏樹もつられてフッと笑うと、雪夜を抱きしめて頭に頬をすり寄せながら呟いた……
「……俺も」
「っ!?はっ、え!?雪夜!?」
急に声がしたので思わず動揺した。
「俺も……好きです」
「お……起きてたのっ!?」
「今起きました……すみません、俺寝ちゃってて……」
「いや、まだそんなに時間たってないし……」
……ん?
起きてると言いながら、雪夜は夏樹の胸に抱きついたまま動かない。
どうしたんだろう?寝惚けてる?
あぁ……まぁ、そうだよな。今日はずっとはしゃぎっぱなしだったし……仕方ないか……
「雪夜、今日は疲れたでしょ。もう遅いし寝ようか」
夏樹は小さく息を吐いて、俯く雪夜の頭をポンポンと撫でた。
「え、いや……でも……」
「なぁに?」
「今日はデート……なんでしょ?」
「……うん、そうだよ?」
「相川たちが……デートは……その……最後にエッチするものだって……」
「……んん゛っ!?」
あああいいいいいくぁあああわぁあああ!!!!!なに雪夜に変なこと教えてくれてんだ!!!!
いや、そりゃデートの最後に……うん、まぁね……間違ってるわけじゃないけどっっっ!!!健全な男子ならむしろそれが目的だよね、うん……そうなんだけどっっっ!!!
「え~と……まぁ、そういうデートもあるけど、別にしなくてもいいんだよ!?」
「え……しないんですか?」
雪夜が、困惑しながら顔を上げた。さっき動かなかったのはたぶん、この顔を隠すためだ……
え、なに?俺に好きって言ったせい?それとも、エッチのこと考えてたから?
なんて表情 してんの……
雪夜の顔を見た瞬間、どこかでプツンと音がした。
「……します!するよね、うん!デートだしね!さ、ベッド行こうか!」
「え、夏樹さんっ!?わ、ちょっ……俺自分で歩……んっ!?…………っぁ――……」
***
雪夜は、初めての水族館デートどうだったんだろう……楽しんでいたとは思うけど……雪夜の思い描いていたデートができたのかはわからない。
雪夜はどんなデートがしたかったんだろう……
俺は、花火も水族館もめちゃくちゃ楽しかった。
デートをして楽しいと思ったのは、また行きたいと思ったのは、雪夜が初めてだ。
だから、独りよがりじゃなくて雪夜をちゃんと喜ばせてあげたい……
雪夜が一番気にしているお金の問題は、咄嗟 に出た「デート代は年上が出す」という嘘で何とか納得してくれたみたいなのでひとまずは安心だ。
というか、それで納得してくれるところがチョロ可愛い。
次、どうしようかなぁ……
雪夜から行きたいところを言ってくれたらいいのに……
あの付箋だらけの本を、俺に見せて欲しい。
雪夜がしたいデートを教えてくれたら……
デート一つにこんなに頭を悩ませることになるなんて、数年前の俺が聞いたら鼻で笑い飛ばすだろうな。
ふとそんなことを思っている自分に苦笑した――……。
***
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