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どんなに暗い夜だって… 6-4(雪夜)
ここ数日、夏樹さんの様子がおかしい……
どこがと聞かれたら、答えられないけど……なんか……よくボーっとしてるし……気が付いたら俺のことをじっと見てるし……俺が夏樹さんの方を向いたら、笑ってくれるけど……
いや、目を逸らされないだけマシなのか?
もしかして、緑川先生が何か余計なことを……いや、でも俺の付き合ってる人が夏樹さんだってことは知らないはずだし……
あ~もぅ……何なんだ……!?
自分にやましいことがある時、人は疑心暗鬼になるのかもしれない……
***
「それでね……雪夜、聞いてる?」
「ひゃいっ!?……え?あ、ごめんなさい、ちょっとボーっとしてました……」
夏樹のこと、緑川のこと、自分自身のこと……最近気になることが多すぎて眠りが浅い雪夜は、半分寝ながら朝食を食べていた。
「まだ眠たいの?」
夏樹がクスリと笑って雪夜の頬を撫でた。
「いや、大丈夫です!えと、それで、何ですか?」
今一気に目が覚めましたっ!!!
夏樹さんに話しかけられてたのに気づかなかったなんて……
「うん、今日の晩飯は佐々木君たちと食べてくれる?俺ちょっと吉田に呼び出されてて……早めに帰るつもりだけど、たぶん晩飯は食べて帰って来るから……」
「あぁ……わかりました。吉田さんと会うの久しぶりですよね?」
吉田は夏樹の友人で、雪夜も一回だけ会ったことがある。
「ん~まぁ、しばらく会ってなかったかな。まったく……用事があるなら電話で言えばいいのに……まぁ、たいした用事じゃないと思うけど、ちょっと気になるから……」
「俺は大丈夫なんで、吉田さんとゆっくり語り合ってきて下さい。あ、でもお酒は明日に差し障りのない程度にしておいてくださいね?平日だし……」
「はーい。あ、今日のバイトって大学のじゃないよね?」
「え?はい、今日は別のバイトです。19時に終わるから、それから佐々木のとこに行こうかと……」
大学のバイトではないと聞いて、夏樹がホッとした顔をする。
なんで大学のバイトかどうかを確認してきたの?やっぱりなんか……気づいてるのかな……
「そか、気をつけてね。変なのに声かけられても着いていっちゃだめだよ?」
「子どもじゃないんだからそんなことしませんよっ!!すぐにそうやってからかうんだからっ!!」
まったくもぅ……夏樹さんは過保護というか、俺のことを子ども扱いしすぎっ!!
「ふはっ……っくく……」
口を尖らせてむくれる雪夜を見て夏樹が吹きだした。
「ごめんごめん、からかったんじゃなくて、本当に心配してるだけだよ。雪夜は可愛いから……」
「あのね、夏樹さんに可愛いって言われるのはキライじゃないですけど、俺一応男ですから!!女の子ならまだしも、大学生の男に声かけてくるやつなんていませんよっ!」
緑川みたいなのは別だけど……
「……しょっちゅう声かけられてるじゃないか」
夏樹がジト目で雪夜を見た。
デートの時にちょこちょこ声をかけられることがあったけど、そのことを心配してるのかな?
「あれはっ……まぁ……たまに変なのがいますけど……って、夏樹さん時間っ!!仕事遅れちゃいますよっ!」
「あっヤバいっ!!え~と、それじゃ夜はちゃんと佐々木君のところに行ってね?何かあったら絶対連絡して!!わかった?」
「はいはい、わかりました!!大丈夫ですってばっ!行ってらっしゃ~い!」
心配してくれるのは嬉しいが、夏樹の注意事項を全部聞いていたら仕事に遅刻してしまいそうなので玄関まで夏樹の背中を押していく。
「行ってきます……」
靴を履いた夏樹が振り返って雪夜を抱き寄せた。
「っ……っん」
夏樹は、雪夜が一緒に家を出る時は、目的地までずっと手を繋いでくれて、別れる瞬間に軽く抱きしめて耳元で甘く「行ってらっしゃい」と言ってくれる。
それが凄く……幸せで……嬉しい……。
そして、今日のように時間差で出かける時の夏樹はどんなに急いでいても雪夜への行ってきますのキスを忘れない。
短いのにちゃんと甘くて濃厚なキスで雪夜を蕩けさせていくところはさすがだと思う……
夏樹は、ゆっくりと口唇を離し、蕩けている雪夜を見ると満足そうに笑って、颯爽と出かけていく。
一方、取り残される雪夜は……毎回中途半端に火照 った身体を鎮めるのに苦労している……
雪夜は、扉が閉まると同時に、壁に持たれたかかったままズリズリとしゃがみこんだ。
「~~~~~~~っっっ!!!!」
赤くなった顔を両手で覆って、足をばたつかせながら声を押し殺して悶えた。
絶対夏樹さんは、俺が後でこうなってるってこと……わかってやってるんだろうなぁ……
朝っぱらから俺ばっかりこんなに夢中にさせられて火照らされて……夏樹さんは涼しい顔して仕事行ってるとか……くそぉ~~!!!なんか悔しいぃいい!!
そりゃ、キスしてくれるのは嬉しいけどっ!!
好きだけどっ!
あ~もぅ大好きっっっ!!!!
キスひとつで雪夜の不安や悩みを軽く吹き飛ばしてくれる夏樹は、やっぱりスゴイ……
よし、今日も頑張るぞぉ~!!
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