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どんなに暗い夜だって… 6-9(夏樹)

 雪夜から、『今日は疲れたから佐々木のところに行かずに帰ってきました』とメールが来た。  そして、佐々木からは、『雪夜の様子が変です。風邪引いたって言ってるけど、絶対何かあったはず……』と連絡が来ていた――……  夏樹も雪夜が『疲れた』なんて理由で佐々木の家に行かなかったというのは気になったので急いで帰りたかったが、酔っ払った吉田に捕まっていたのでなかなか抜けられず、吉田がトイレに行った隙をついてようやく帰って来た。  夏樹が家に帰ると、雪夜はもうベッドに入っていた。  いつもなら夏樹がいないと眠れないと言って起きて待っているのに……    そんなに体調悪いのかな?  起こさないようにそっと雪夜の額に触れる。  触った感じでは熱はなさそうだし呼吸も安定していたので、少しホッとした。  丸くなって眠る雪夜が腕の中に夏樹の服を抱え込んでいるのをみて、ちょっとキュンとする。  雪夜はひとりで家にいる時、淋しくなったら夏樹の服をよく抱えている。  夏樹の匂いが安心するらしい。  自分から服をくれとは言わないが、一度帰りが遅くなった時に夏樹の服が全て洗濯済みだったことがあり、不安定になった雪夜が夏樹の服を全て引っ張り出して泣いていたのでそれからは必ず一枚は残しておくようにしている……(あの時は泥棒でも入ったのかと思ってかなり焦った) 「ただいま」  耳元で囁いて、頬にキスをした。 *** 「……なんだ?」  酔い覚ましに水を飲んでいると、台所のゴミ箱にシート状の薬の容器が捨ててあるのが視界に入った。  拾って薬の名前を見ると、雪夜に処方されている睡眠薬と精神安定剤だった。  この薬は、夏樹と同棲するようになってからはほとんど飲んでいない。  これを飲んだからひとりで眠れたのか……  って、ちょっと待て。これ両方一緒に飲んだのか?    薬の残数を見る限りでは、多量摂取はしていないはずだけれども、精神安定剤も睡眠を促す効果があるので、この2種類を同時に使う時はよほど眠れない時だと言っていた。  でも、今夜は多少遅くなっても必ず夏樹が帰って来るとわかっていたはずだ。  それなのになんで…… ***  ――花火の数日前、大学のバイトから帰って来た雪夜の様子が気になった。  その日はご褒美デートの話になってうやむやになってしまったが、後日、佐々木に心当たりがないか聞くと、ちょっと気になることがある……と緑川について話してくれた。  佐々木は、緑川の雪夜を見る目が気に入らないと言った。 「あの先生、人の好さそうな顔をしてるけど、たまに舐めるような目つきで雪夜を見ている時があるんですよ。俺の気のせいかもしれないけど、何か好きになれない――……」  夏樹は佐々木の人を見る目は確かだと思っている。(性格は少々難ありだが……)  その佐々木が好きになれないと言うなら、その緑川は少なくとも見た目通りの良い人ではなさそうだ。  この時から緑川は夏樹の中でも要注意人物になっていた。    あの日以降、雪夜は、大学のバイトがある日は朝から表情が硬く口数も少なくなっていった……他のバイトの日には普通なのでやはり緑川と何かあったと考えるのが妥当だろう。  だが、いつまで待っても雪夜からは何も話してはくれなかった。    あまりこちらから問い詰めるようなことはしたくないけど、さすがに……  そろそろ直接聞き出すか……佐々木にも未だに何も相談していないみたいだし……   ***

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