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どんなに暗い夜だって… 6-14(雪夜)

 雪夜が夏樹の名前を叫んで瞳を固く閉じた瞬間、ガシャンッ!と大きな音がしたかと思うと、ドゴッと鈍い音がして、身体の上の重しがなくなった。  目を開けると、ちょうど蛍光灯が真上にあって一瞬目が眩んだ。 「雪夜っ!!大丈夫かっ!?」 「……え?」  名前を呼ばれてもう一度薄く目を開ける。  あり得ない……雪夜は今日、別のバイトの日だ。  だから、雪夜がここにいることは知らないはずなのに…… 「雪夜は俺を呼ぶのが遅すぎるっ!!!」  語気を荒げる夏樹に抱き起されて、そのまま強く抱きしめられた。 「なん……で……?」  夏樹の呼吸が荒い。  うるさいくらいに脈打っているのは俺の?それとも……  状況が読めず茫然(ぼうぜん)とする雪夜の目を夏樹が覗き込んだ。 「……っのバカッっ!!なんで一人で来たの!!いつも何かあったら俺に言えって言ってるだろっ!?なんでっ……~~~~っちょっとは頼れよっ!!!」 「……え……」 「はぁ……ったく……勘弁してよもぅ……っ」  続けて何か言いかけた夏樹が、雪夜の口元を見て眉間に皺を寄せた。 「口!!その血どうした!?切ったのか!?何された!?」  夏樹に言われて口唇を拭うと、手に血がついた。  緑川にキスをされたせいで雪夜の口唇にも血がついていたらしい。 「あ、これは……さっきキスされた時に先生の舌を噛んだから……俺のじゃないです……」  慌てて服の袖でゴシゴシと口唇を(ぬぐ)った。 「噛んっ!?……っ……そう……そか……」  夏樹が一瞬キョトンとした後、ホッとしたように一瞬目を閉じた。  ゆっくりと目を開け、泣きそうな顔で微笑むと雪夜の肩に顔を埋めて大きく息を吐いた。 「怒鳴(どな)ってごめん……よく頑張ったね」  雪夜を抱きしめる夏樹の指が、小さく震えていた。  夏樹がこんなに動揺しているのは初めて見た……雪夜に対してこんなに強い口調になること自体珍しい。 「あ、の……ごめ……っ」  見たことのない夏樹の様子に戸惑う。  でも、夏樹にそんな顔をさせているのは自分のせいだと思うと、なんだか申し訳なくて……  声を詰まらせながら謝ろうとした雪夜の口を夏樹が軽いキスで塞いだ。 ***

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