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どんなに暗い夜だって… 7.5-2(夏樹)
「お久しぶりです。隆 さん、斎 さん、浩二 さん。裕也 さんは先日ぶりです」
全員40代なのだが、肉体年齢は恐らく20代の自分と差がないであろう化け物イケオジ軍団に思わず真顔になる。
ホントこの人たち老けねぇな……
「おいこらナツ、俺と久しぶりっていうのはおかしいだろ!昨日呼び出したのに無視しやがってっ!」
ホストのような見た目の浩二が、ちょっと不満そうな顔をした。
「昨日は忙しかったんです。仕事が立て込んでる時に呼び出さないで下さいよ!!」
「いやいや、俺の呼び出しを無視するのはどう考えてもおかしいし!!仕事のことかもしれないだろ!?」
「仕事のことだったんですか?」
「いや、暇だったから?」
悪びれもなく言い放つ浩二を見て、大袈裟にため息を吐いた。
「そんなに毎日社長の遊び相手なんてできません。社長と違って平社員の俺は暇じゃないんですよ」
「役職つけてやるって言ったのに嫌だって言ったのはお前だろ~?」
「役職なんて面倒くさいっすもん。っていうか、その役職って社長秘書のことでしょ?浩二さんのお守り役なんて俺には無理ですよ」
「なんだよぉ~~!!だったら文句言わずに働け~!!」
「文句は言ってませんよ。社長の遊び相手をしてる暇はないって言ってるだけです」
「え~……せっかくお前引き抜いたのにつまんねぇなぁ……斎もなかなか相手してくれねぇし」
「ちょっとっ!俺、社長の遊び相手するために引き抜かれたんですか!?勘弁してくださいよぉ~……社長はもうちょっと真面目に働いてください!」
「働いてるっつーの!」
浩二は、見た目はチャラいがこれでも一応夏樹が勤める会社の社長だ。
他企業で働いていた夏樹を好条件で引き抜いてくれた。
いわゆる、ヘッドハンティングというやつだ。
就職活動をしている時にも浩二には誘われていたのだが、最初から知り合いがいる会社に入るのは何だかコネ入社のようで嫌だったので、別の企業に入った。
その企業でそれなりの成果を出せるようになった頃、もう一度浩二から話があったのだ。
夏樹は別に前の職場に思い入れがあったわけではないので、好条件になるならと浩二のところに移った。
夏樹にしてみればそれくらいの軽い気持ちだったのだが、ここ数か月はその選択をして良かったと心から思っていた。
なぜなら、雪夜が隣人トラブルで不安定になっていた時、長期間在宅で仕事をするという無理が通ったのは、社長の浩二が一言「いいよ~」と言ってくれたからだ。
もちろん、夏樹だけのことではなく、他の社員も家族の介護や看病、育児等でどうしても家にいなければいけなくなった時には、いつでも在宅勤務にしてもいい。ということになった。
浩二が社員全員に適用してくれたおかげで、他の社員からも嫌味を言われるどころか感謝をされる始末で、夏樹の急な在宅勤務を快く受け入れてくれた。
なので、これでも一応浩二には感謝はしている。
「今日はお前の自慢の恋人はいないのか?」
「はい、今日は友人と遊園地に行ってます」
「なんだよ~、せっかく会えると思って楽しみにしてたのに~……」
浩二が、不貞腐れてテーブルに突っ伏した。
こんな調子でよく社長が務まるものだと思うが、これで浩二は敏腕社長で、何よりも人を見る目があるので会社には優秀な人材が揃っている。
昔から人望があって、人を使うのが上手いのだ。
その浩二に引き抜かれたのだから、夏樹もそれなりに“使える”と認めてくれているのだろう。
その点はちょっと嬉しい。
浩二には絶対言わないけれども。
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