169 / 715

どんなに暗い夜だって… 7.5-5(夏樹)

「話終わった~?」  裕也(ゆうや)がグリグリと二人の間に顔を押し込んで来た。 「どっから来てるんですか裕也さん……一応終わりましたよ」  慣れているとはいえ、ちょっと呆れながら裕也を見る。  (いつき)は裕也のことなど気にもせず、スコッチのおかわりをしていた。 「よ~し、んじゃコレ頼まれてた分の情報ね」  裕也がいたずらっぽく笑いながら夏樹の手にUSBメモリを渡して来る。 「え、もう調べついたんですか!?」 「ん~……ちょっと手こずったけどね。でもそれねぇ……ちょ~っと面倒なことになってるよ。カウンセリングにも関係してくるから、いっちゃんも知っておいた方がいいと思う。とりあえず……内容見てみる?」    珍しく裕也がちょっと深刻な表情をしたので、何となく嫌な予感がした…… ***  裕也からPCを借りて内容を確認した夏樹は、しばらく声が出なかった。 「え……っと……これって……マジですか?」 「ん~、だいぶ厳重なセキュリティの奥の奥に入ってたから、確かな情報だと思うよ。で、こっちが今現在の雪ちゃんの記憶だね」  裕也が別の画面を開く。 「……そうですね。雪夜から聞いているのはこっちの方です」 「これは……想像以上に厄介だなぁ……俺もいろんな相談受けてるけど、さすがにこういうケースは初めてだ……」  一緒に見ていた斎が唸った。 「斎さん……」  思わず斎に(すが)るような目を向けてしまった。  チラッと夏樹を見た斎が、フッと笑った。 「どうした?怖気付(おじけづ)いたのか?まぁ、ちょっとでも面倒だと思ったなら今のうちに別れろ。これは生半可な気持ちでどうにかなる問題じゃないぞ」  一瞬弱気になったことを即座に斎に見破られて、ちょっと顔が熱くなる。  俺の恋人のことなのに、最初から斎に頼ろうとしてしまった自分が情けない…… 「別れませんよっ!確かにちょっと予想以上でしたけど……でも、何があっても俺は雪夜の傍にいます。それに、この情報が本当なんだとしたら余計に雪夜を一人になんてできない……」  もう二度と手放さない。  雪夜を改めて迎えに行った時に誓ったあの気持ちは変わらない。   もっと早くこの事実を知っていればもう少し対応の仕方があっただろうにとは思うが、過ぎたことを言っても仕方ない。  それよりも、これからどうするか考えなければ…… 「……そうか。わかった。おまえがちゃんと腹決めてるなら俺も出来る限りサポートしてやるよ」  斎が柔らかく笑って夏樹の肩を軽く叩いた。 「もちろん、僕たちもサポートするよ~!ね?」  裕也が後ろで飲んでいた浩二(こうじ)たちに呼びかけると、みんなグラスを軽く持ち上げた。 「ありがとうございますっ!――」 ***

ともだちにシェアしよう!