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どんなに暗い夜だって… 番外編2-2(雪夜)
「ねぇ、雪夜。やっぱり、佐々木くんたちと昼間どこか出掛けたら?ずっと家に一人でいるのは退屈でしょ?」
「あ、いや……全然大丈夫ですよ!それに佐々木たちはバイトもあるし……」
確かに……ちょっと暇ではあるけれども、元々そんなにアウトドア派というわけでもないので、室内にいるのは問題ない。
本を読むのも好きだし、ゲームもあるし……それに……
「俺は、夏樹の家 にいる方が安心するし……」
夏樹の家 にいれば、どこにいても夏樹さんの匂いがする。
ずっと守られているようで、安心する……って、何か俺変態っぽい!?
いや、でも本当のことだし……
だから本当に全然……大丈夫なんだけど……
心配そうな顔で雪夜を見ていた夏樹を安心させようと精一杯笑顔を作ってみせたのだが、なぜか夏樹の眉間には更に皺が増えた。
な、なんで!?怒っ……てる?
思わず視線が泳いで、頬が引きつった。
う~ん……どう言えば夏樹さんが納得してくれるんだろう……
って、そう考えてる時点でおかしいのか。
だって、本当のことを言えないのに、嘘をいくら並べても納得なんてしてもらえるはずがない。
だけど……プレゼントのことは……まだ話したくないし……
雪夜が下を向いて唸っていると、夏樹がネクタイを緩めながら小さく息を吐いた。
「雪夜、今日は外で食べようか。まだ時間早いし」
「え?あ、はい!」
「着替えてくるから待ってて」
夏樹はそう言うと、雪夜の額に軽く口付けて寝室に消えていった。
***
同棲をするようになってから夏樹と外で食事をする機会は、ぐっと減った。
でも家で食べる方が周りを気にせずに食べられるし、思う存分夏樹を見ていられるので嬉しい……
実は雪夜は、夏樹の誕生日プレゼントのために佐々木に料理を習って以降も、仕事で疲れている夏樹の代わりに作れるようになりたいと思って料理の練習をしている。
だが、ようやく卵の黄身を潰さず、殻も入れずに割れるようになったレベルなので、まだまだ先は長い……
それに、家にいる間に練習しようと思ったのに、一度包丁で指を切ってからは、夏樹に「必ず俺か佐々木くんがいる時じゃないと包丁は使っちゃダメ!」と言われてしまったので、全然練習が進まないのだ。
包丁を使わずにできる料理って……何?
サラダとか……?葉っぱ千切 る?
っていうか、俺って料理の才能なさすぎる……
自分がこんなに不器用だとは思っていなかったので軽くショックを受けたが、でもでも、だからと言ってこれくらいで諦めたりはしない!
だって……誕生日の時みたいに喜ぶ夏樹さんの顔が見たいから!
うん、大学が始まったら、また佐々木に教えて貰おう!
雪夜が決意も新たにグッと拳を握りしめた時、頭にポンと夏樹の手が乗った。
顔を上げると、カジュアルな服装に着替えた夏樹が立っていた。
「お待たせ、行こうか」
「はい!」
***
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