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どんなに暗い夜だって… 番外編2-5(夏樹)

 夏樹が家に帰ると、雪夜が嬉しそうに出迎えてくれた。 「おかえりなさい!」 「ただいま!」  雪夜にただいまのキスをして抱きしめる。 「……どうしたの?なんだかご機嫌だね」 「あのね、えっと……あ、鞄持ちます!」 「え?あぁ、ありがとう」  鞄を渡すと、雪夜がギュッと鞄を抱きしめた。  いつも無意識にしているようだが、自分の持ち物でそういうことをされると……  ムラッと来る。そしてイラッとする。  どうせなら俺に抱きついてくれたらいいのにっ!!  鞄に嫉妬している自分が情けないので顔には絶対に出さないけれども……っ! 「こっち来てください!」  鞄を寝室に置いた雪夜が、リビングへと夏樹を招いた。  雪夜が楽しそうなのはいいけど、一体何があるんだろう?  スーツの上着を脱ぎながらリビングに入ると、雪夜がニコニコしながら冷蔵庫から何かを取り出した。 「あのね、俺、夏樹さんにいつも貰ってばかりで、何にも返せてないでしょ?だから、バイトしてお給料貰ったら一番に夏樹さんにプレゼント買おうって思ってたんです!……でも俺、情けないことにこんなに一緒にいるのに夏樹さんが喜ぶものが全然わからなくて、しかもそんなに高いものは買えないし……で、ずっと悩んでたんだけど、今日佐々木に相談したらね、だったら食べる物がいいんじゃないかって言われて……あのね、初めてのお給料を貰った社会人の人はね、両親を食事に連れて行ったり、旅行をプレゼントしたりするんですって!あ、もちろん夏樹さんは俺の両親じゃないですけど!!えっと、それで、いろいろ考えて、ちょっと奮発(ふんぱつ)して高級和牛肉を買ってきました!!」  若干緊張気味の雪夜が早口で経緯を説明すると、ドヤ顔で夏樹に霜降り肉の塊を見せてきた。 「……え、俺のために?」 「はい!」 「プレゼント……?」 「はい!」  バイトの給料が入ったら俺にプレゼント買おうって思っていたって?  給料入ったのだいぶ前だと思うけど……それからずっと考えてくれてたの?  あぁ、だから、給料入ってからも佐々木たちと遊びに行くのを渋ってたのか…… 「……」  雪夜に何か言わなきゃと思うのに、口を開きかけて固まってしまった。 「あれ……?あの……夏樹さん?」 「え、ちょっと待って……ちょっとだけ待って!10秒頂戴!?」  不安そうに夏樹を見上げて来る雪夜を手で制して、顔を覆ってしゃがみこんだ。  嘘だろ……何これ……!?  顔が熱い……っ!  え、何なの?雪夜さんってば……可愛いすぎかよっ!!  あ~もう今すぐ抱き潰したい……っっ  誕生日の時には嬉しさのあまりはしゃぎ過ぎたので、ちょっと気持ちを落ち着かせる。  いや、無理っっ!!落ち着かないですっっっ!!!  雪夜の気持ちが嬉しい……めちゃくちゃ嬉しいっ!  だけど……俺のために買ってきたの?  ふと我に返る。  嬉しい反面、俺のためにせっかくの給料を遣わせてしまったのかと思うと、なんだか複雑な気持ちになって、どんな反応をすればいいのかわからなくなってしまった――…… ***

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