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どんなに暗い夜だって… 番外編2-7(夏樹)
「ところで雪夜、この肉どうするの?」
夏樹は肉を指差して雪夜に問いかけた。
雪夜がプレゼントしてくれたのは、当然生肉だ。
この塊なら、まぁ、だいたい想像はつくけど、問題は……
「え?食べて下さい!」
雪夜が首を傾げながら笑顔で答える。
「え?あ、うん。えっと……どうやって?」
「あ、えっと……生は……ダメ……だと思います!!」
そんな曇りなき眼で言われると、それ以上ツッコミ辛いんだが……
っていうか、え、これは俺どう反応するのが正解なの!?
さっきから、肉のことだとわかっていても、ちょっとムラッと来る返答ばかりで思わず笑顔が引きつる。
肉は後にして先にベッドに連れて行きたいけど、それをすると雪夜が晩飯食べられなくなるから……んん゛~~……我慢!!
「夏樹さん?」
「ん?うん、そうだね。生はダメだよね!!え~と……焼く……?」
「……あ、はい。あの、夏樹さんが焼きます!!」
雪夜が、言い忘れていた!と手をポンと叩いてにっこり笑った。
「俺が焼くの!?」
いや、薄々はわかってたけど……
「はい!あのね、最初は俺が焼こうと思ってたんですけど、佐々木に、『焼くのは夏樹さんに自分で焼いて貰えっ!雪夜が焼いたら、せっかくのいい肉が黒焦げになりそうだからな!』って言われましたっ!!」
「ははは、何だそれ」
ニコニコしながら佐々木の口真似をする雪夜を見て、思わず苦笑した。
「……え、ダメですか?あ、じゃあ、俺が焼きましょうか!?」
雪夜が意気揚々と腕まくりをしようとしたのを、そっと手で制した。
「いや、いいよ。わかった。じゃあ、今日の晩飯はこのお肉焼こうか」
夏樹はそう言うと、雪夜の頭をポンと撫でて、腕まくりをした。
さてと……肉は焼くとして、付け合わせどうしようかな~……
ネクタイを外してエプロンを付けながら、考える。
雪夜は、夏樹が脱いだ上着やネクタイを片づけるために寝室に消えていった。
***
「大丈夫そう……かな……?」
雪夜の背中を見ながら、夏樹はポツリと呟いた。
帰宅前に、佐々木から今日の昼間、雪夜と出かけたという連絡は入っていた。
ラーメン屋から出た時の雪夜の様子がおかしかったことも。
佐々木が言うには、「雪夜の視線の先にいた人の背格好が、緑川に似ていたような気がする。もちろん本人じゃなかったけど、もしかしたら、一瞬思い出しちゃったのかも……その後は大丈夫だったけど、ちょっと顔色も悪かったから、また不安定になるかもしれない」とのことだった。
確かに、若干不安定……
普段ならあれくらいのやり取りで泣くとかあり得ない。
緑川に似ていた……か。
顔ならまだしも、背格好が似ている人間など外に出れば大勢いる。
たまたま後ろ姿が似ていたというだけでそんなになっているなら、ますますバイトなんてさせられない……
そろそろバイトを始めてもいいとは言ったけれど、本当は夏樹はまだ反対だった。
佐々木たちが、緑川のことが片付いたのだから、バイトでもしている方が気分転換になるんじゃないか?と言うから、渋々承知したのだ。
まぁ……あれだけ条件をつけておけば、なかなか見つからないとは思うけど……
***
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