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夜明けの星 1-4(夏樹)

「ゆ~きやっ!」  夏樹はスキップのような軽い足取りで走り寄ると、雪夜の手首を掴んでいた男を蹴り倒して、満面の笑みで雪夜を見た。  や~っばい、俺凄くない!?本当に雪夜見つけちゃったし!!  雪夜が絡まれていた様子だったのは気になったけれど、それ以上に雪夜に会えたことが嬉しくて、テンションが上がっていた。 「……え?な……夏樹さん!?」 「だね~!俺も今そこで吉田と飲んでたんだ!」 「え?あの……えぇえっ!?」  雪夜が驚いた顔で大きな瞳をパチパチと(しばたた)かせながら夏樹を見た。 「雪夜もここらで飲んでたの?」 「あ、はい。すぐそこの店で……って、危ないっ!」  さっき蹴り倒したやつが起き上がって殴りかかって来る気配がしたので、もう一度蹴り倒して睨みつけた。 「今忙しいから邪魔しないでくれる?」  まったく!!人がせっかく雪夜と出会えた喜びを味わってるのにっ!! 「っていうか、もしかしてコレも雪夜の友達?」  地面に転がる男を指差しながら雪夜を見る。  夏樹は佐々木と相川以外の雪夜の友人とは面識がない。  絡まれているように見えたけれど、もしかして友人かもしれないと思って一応手加減をしておいたのだ。 「いえいえ、違いますっ!!えっと、誰かわかんないです。店から出たところで彼女たちに絡んできて……」  雪夜がチラリと背後を見た。  その視線を追うと、雪夜のすぐ後ろに数人の女の子が座り込んでいた。  今日はミス&ミスターコンテストの打ち上げだと言っていたので、その関係者なのだろう。  夏樹は雪夜しか視界に入っていなかったので気付かなかったが、どうやら雪夜はこの子たちを庇っていたらしい。 「あれ?佐々木たちは?」  雪夜を頼むぞって言っておいたのに、どこで何してんだ? 「あ、そうだ!夏樹さんっ!!」 「ん?なぁに?」 「あっちで、佐々木たちが……っ!!」 「あっち?」  雪夜に言われて周りを見ると、ちょっと離れたところで佐々木や相川達が数人と揉めていた。    え、あいつら雪夜を放置して何やってんの? 「お~い、相川~!何やってんだ?」 「はぁ!?なんで夏樹さんがここにいるの!?っていうか、何やってるって、どう見ても絡まれてんでしょうがっ!!」 「絡まれてるって……お前ら何やったんだ?」 「何もやってねぇよ!!こいつらがうちの連れの女の子たちに絡んで来たんだよっ!!」 「あぁ……じゃあ、さっさとお引き取り願え」 「俺だってさっさとお引き取り願いたいわっ!!」 「ったく……仕方ねぇなぁ……」  どうやら、相川たちに絡んでいるやつらと雪夜に絡んでいたやつらは仲間らしい。  ということは、ちょっと手荒くしてもいいってことだよな?  後から悠々と歩いてきた吉田に目配せをすると、とりあえず雪夜に危害が及ばないように、雪夜の近くにいたやつらを蹴り飛ばして引き離した。  吉田がそのうちの身体付きが若干小さいやつを相川たちの前にいたやつらに向かって勢いよく放り投げる。 「おら、いくぞ~っ!」 「うわああっ!!」 「げっ!?マジかよ……っ!!――」 「あ、おいこら、お前ら仲間だろうがっ!ちゃんと受け止めてやれよ。まったく酷い奴らだなぁ……これだから最近の若いやつらは……」  吹っ飛んできた仲間を受け止めようともせずにサッと避けたそいつらに向かって吉田が(なげ)いた。 「おい、吉田。最近の若いやつらは、とか言い出したらもうおっさんだぞ」 「ええ!?俺ももうおっさんかぁ~!」  夏樹と吉田はのんきな会話をしながら、相川たちに絡んでいたやつらも軽く転がしていった。  襟首を掴んでグイッと回すように引っ張り少しよろけたところに足をパンッと払うだけで面白い程に簡単にひっくり返って行く。  アスファルトの上に受け身なしでひっくり返っているところを見ると、ケンカ慣れしているとは言えない。  なんだこいつら……もうちょっと骨のあるやつはいないのかねぇ……  っていうか、なんで佐々木たちはこんな弱っちぃやつらに絡まれてたんだ? 「で、最近の若いやつらはどうする?おっさんともうちょっと遊んでいくか?それともさっさと引き上げるか?」  とりあえず仲間だと思われるやつらを全員地面に転がすと、呻いている中でも比較的元気そうなやつに向かって吉田が嬉しそうに話しかけた。 「俺は今めちゃくちゃ機嫌良いから、お前らがこいつらにもう絡まないって言うなら見逃してやるよ?」  そう、俺は今とても機嫌が良い!気分も良い!!  夏樹は、少し離れたところで心配そうに見ている雪夜に、手を振りながら笑いかけた。 「っざけんなよおっさんっ!何なんだよ一体っ!おっさんは関係ねぇだろうがっ!?邪魔すんじゃねぇよ!」 「邪魔?邪魔してんのはお前らの方だろう?」  そもそも、こいつら一体何がしたいんだか……  夏樹は地面に(うずくま)りながらも口だけは威勢のいい若者を訝しげに眺めた――…… ***

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