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夜明けの星 1-10(夏樹)

――あ?お前の上がいるのか?」 「はははははいっ!!あの、その人に『ミス&ミスターコンテストで優勝した美女を連れてこい』と命令されて、それで今日あの店で打ち上げをすると聞いたので、あいつらに行かせたんですぅ~!!」  廃工場に着くと、ちょうどいいロープがあったので、(たかし)は残りのやつらをそのロープで縛り上げた。  隆の愉しそうな様子に苦笑しながら、(いつき)と夏樹は白川(しらかわ)に詳しい話を聞きだしていた。  白川によると、どうやら白川の上にもまだ誰かいるらしい。 「優勝した美女?」 「はははひ!!あの、えっと、『オレンジっぽいミニワンピースを着ててふわふわの髪でお目目ぱっちりの人形みたいな可愛い子』だそうで……名前は知らないんすけど……」  おいおい……それってまさか…… 「っつーか、なんでお前らはあの店で打ち上げするってわかったんだ?」 「大学で聞き込みしてもなかなか誰かわかんなくて焦ってたんですけど、俺の手下がちょうどあの店でバイトしてて、それで、打ち上げするのがわかったんす」 「バイトか……なるほどな」 「あの~……たぶん俺ら以外にも命令受けてるやつらがいると思いますよ……」 「ぁあ゛っ!?」  夏樹が思わず声を荒げると、正座をしたまま白川が器用にピョコンと飛び上がった。 「ひっ!すすすみませんっ!!」 「それどういう意味だ?」 「ああああの……俺らの上にいる人は、手下がいっぱいいるんで、こういう探し物系のは数人に命令することが多いんすよ」 「ってことは、今もお前ら以外にも誰かがその『優勝した美女』を探してると?」 「そういうことっす!!」 「そうか……斎さん、後どうぞ。俺ちょっと電話してきます」  後ろにいた斎と交代する。 「はい。それじゃ次は私から質問しますね」 「ははははいっ!!――」  夏樹は斎たちの声が届かない場所まで離れてから電話をかけた。 「はいはーい!」 「あ、裕也さん、今どこですか?」 「今ね~女の子たちを送ってるとこだよ~?これが終わったらカラオケの方に行って吉田君と交代するね!」 「わかりました。あの、実は――」 「――なるほど、わかった。吉田君にはそっちから連絡入れておいて。僕もできるだけ早くカラオケの方に合流する」 「よろしくお願いします」  吉田にも電話をかけて、裕也に話したことを伝えた。  吉田たちがいるから大丈夫だとは思うけれど……  先ほどから夏樹が気になっていたこと。  あいつらが、偶然雪夜たちに絡んだのか、それとも、狙って絡みに来ていたのか。  偶然なら良かったのだが、白川の話から、狙って絡みに来ていたことがわかった。  まさかの『優勝した美女』を狙って。  しかも、他にも探しているやつらがいるだと!?  命令したっていう奴の狙いは一体何なんだ!?  『優勝した美女』を見つけてどうしたいんだ……  夏樹は自分の携帯の写真フォルダを見た。  そこには、ふわふわのセミロングのウィッグをつけてオレンジっぽいミニワンピースを着て、本気メイクをされたお目目ぱっちりの人形みたいに可愛い『夏樹の恋人(優勝した美女)』が照れ笑いをしていた――…… ***

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