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夜明けの星 1-19(夏樹)
――その後、あの騒ぎで一時的にステージ進行が止まったものの、30分程で再開してミス&ミスターコンテストの発表も無事に終えることができた。
ミスコンの結果としては、得票総数一位はゆっきー、二位がさっきー、なぜかあいちゃんが五位だった。(あいちゃんよりも得票数が少なかった子たちのショックを通り越した無の表情が忘れられない)
もちろん司会の三人は出場者ではないしそもそも男なので、ミスコン優勝者は得票総数三位の女の子だったわけだが、あまりにも三位との差が付き過ぎているのでゆっきーとさっきーの得票数も発表しないわけにはいかなかったらしい。
ミスコン、ミスターコンの優勝者は大学のホームページやSNSで拡散されるが、司会の三人も入れた結果についてはその場限りで、ウェブ上では公開されない。
そこはしっかり者の佐々木が事前に、女装する絶対条件として、
・ウェブ上には公開しないこと
・絶対に三人の正体がバレないように配慮すること
等を先輩たちに約束させてあるからだ。
つまり司会の三人のプロフィールは極秘扱いで、三人の正体は一部の人間しか知らないことになっている。
あいちゃんはバレバレな気がするが……以外と三人とも普段の姿だと気づかれないらしい。
それでも、去年の学祭後、学内でゆっきーとさっきーを探す人が後を絶たず、外部からも二人を一目見ようと人が押し寄せて結構な騒ぎになったのだとか。
そのため、今年は先輩たちがコンテストの合間に『司会の三人について追及する輩が出たり、個人情報を拡散する輩が出たら来年から三人は出ません。来年も三人に会いたければ、外部の人間にも絶対に漏らさないこと――』と何度もアナウンスをして注意していた。
何気に来年も女装させる気満々なのがわかって佐々木は少し苦々しい顔で先輩を見ていたが、雪夜と相川は全く気づいていない様子で、のんきにアナウンスを聞いていた。
注意をしたところで律儀に守るやつがどれだけいるかわからないが、アナウンスをしていた先輩は大学内でも有名なエンジニアらしく、学内の人間は先輩がアナウンスの最後に『SNSで拡散しているやつを見つけたら特定して逆にそいつの個人情報を流すからよろしくね』と言っていたのが冗談やはったりではないとわかっているので、まず守るだろうということだった。
夏樹も裕也に頼んでSNSを調べて貰っているが、学祭から一週間経っても今のところは流出していないらしい。
いくら先輩が注意していたとは言え、学祭での出来事なので、もちろん夏樹たちのように外部からもたくさん人が来ていた。
にもかかわらず、一週間経っても三人のことが流出していないというのが少し解せない。
まぁ、外部の人間にとっては三人は賑やかし程度にしか思っていないのかもしれないし、もしかしたらもう先輩が何らかの手を打っているのかもしれないが――……
***
さて、それらを踏まえた上での今回の話だ。
白川の上にいるやつが探しているのは、『ミスコンで優勝した美女』ということだが、容姿を聞く限りそれは雪夜こと、ゆっきーのことだ。
大学のホームページに載ったミスコン優勝者については名前も掲載されているし、ゆっきーとは全然違う容姿、服装だったので、間違うはずがない。
ゆっきーが得票総数一位で実質優勝だったことを知っているのは、あの日あの場所にいた人間だけのはずだ。
ということは、白川の上のやつも、あの場所にいたということか。
まぁ、その場にいたやつから話を聞いたのかもしれないけれども。
あれ?そういえばあの時――……
***
「ナツ~!いい加減戻って来て下さい!もう電話は終わってるでしょう?」
夏樹は、自分を呼ぶ斎 の声で我に返った。
学祭の時のことを思い出そうとしていたのだが、あまりにもゆっきーが可愛かったので、思い出しついでに軽く現実逃避してしまっていたらしい。
時計を見ると、30分近く経っていた。
いや、だってマジでゆっきー可愛かったんだもん……
夏樹はもう一度ゆっきーの写真を見てふっと笑うと携帯の画面を閉じた。
「さ~てと、さっさと片づけるか!」
深く息を吸い込んで表情を引き締めると、斎の元へと戻った――
***
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