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夜明けの星 1-23(雪夜)
「それにしても……夏樹さんの交友関係って一体どうなってんの?」
風呂上り、ジュースを飲みながら相川がポツリと漏らした。
「雪ちゃんは吉田さん以外の人たちとも面識あるの?」
「あ~……えっと、裕也さんは緑川先生の時にいろいろ助けてもらって、斎さんは夕食に誘われて何回か夏樹さんと一緒に家にお邪魔したことがある程度かな……他の人のことは知らないよ」
「吉田さんは夏樹さんの同級生なんだろ?でも斎さんとかは若そうに見えるけど貫禄があるっていうか、まぁ夏樹さんの態度から見ても年上っぽいよな」
「裕也さん達は、夏樹さんのお兄さん的な存在だって言ってたよ」
「お兄さん的な存在ねぇ……幼馴染とかか?」
「あ、近所のお兄さん的な?俺も子どもの頃は近所のお兄さんによく遊んで貰ったなぁ~」
自身も幼馴染同士の二人は、何となく自分たちの経験と照らし合わせているようだったが、幼馴染や近所のお兄さんと遊んだ記憶がない雪夜にはいまいちピンとこない。
というか……改めて考えてみると……
「俺、夏樹さんのこと何にも知らないんだなぁ……」
「夏樹さんのこと?プライベートな話とか聞いたことないのか?」
「うん……」
だって、最初は偽りの関係で、夏樹さんとはすぐに終わると思ってたから……踏み込んだことなんて聞けなかった。
誕生日だって……たまたま夏樹さんが同僚の誕生日の話を話題にしたから、その流れでお互いの誕生日を知ることが出来たのであって、それだってもしかしたら夏樹さんは言いたくないかもしれないと思いつつ、めちゃくちゃ勇気を振り絞って聞いたのだ。
ちゃんと付き合い始めてからは俺がずっと体調を崩していたし、夏樹さんとの同棲生活に慣れるのに精一杯で、まだ夏樹さんの個人的な話を聞けるような心のゆとりがなかった。
夏樹さんも、俺のプライベートな話はあまり聞いてこないし……トラウマの話をした時に少し話した程度だ。
「そっかぁ……まぁ、家族のこととかって、あんまり知られたくない場合もあるよな……」
佐々木がちょっと遠くを見るような目をした。
佐々木は両親とあまりうまくいっていないと前に少しだけ聞いたことがある。
相川は幼馴染だからいろいろと知っているみたいだけど、佐々木の家のことをペラペラと話すようなことはしないし、雪夜も佐々木本人が言わないことを相川から聞くつもりはない。
いろんな家庭の事情があるから、いくら親しい友人や恋人でも本人から話したいと思わない限りあまり踏みこむべきではないと思う。
雪夜だって、自分の家族のことは……あまり話したくない。
仲が悪いわけじゃないんだけど……
友人関係についても、恋人だからと言って全てを話す必要はない。
雪夜だって、自分の友人については佐々木と相川しか夏樹に紹介していないし……いや、まぁ……他に親しい友人がいないっていうのもあるけど……
「だけどさ、雪夜はちょっと先回りして考えすぎなところもあるぞ?」
「え?」
「緑川のことで説教した時にも言っただろ?何か困ったことがあったら話せ、聞いてどうするかは俺たちが決めるって。それと一緒でさ、まずは聞いてみれば?家族のこととか友達のこととか。夏樹さんなら、話したくない事は話したくないって言うだろうし、その理由もちゃんと言ってくれると思うぞ?」
「聞いてもいいのかなぁ……」
「いいに決まってんだろ。相手が話したくない、聞かないでくれって言ってるのにしつこく何回も聞くのはダメだけど、好きな相手のことをいろいろ知りたいとか理解したいとか思うのは自然なことだし、聞かれた方も嬉しいと思うけどな。それに、話したくないことだって、今は話せないけど、いつか話してみようかなって思うかもしれないだろ?」
「うん……そうか、そうだね!」
「なるほど!じゃあ翠、俺もお前の家族のこと聞いていい!?」
大人しく佐々木の話を聞いていた相川が、急に割り込んできて佐々木の顔を覗き込んだ。
「お前は俺ん家のことほとんど知ってんだろうが!これ以上何を知りたいんだよ!?」
「そうだった。じゃあ、友達?」
「それも知ってるだろ!?っつーか、共通の友人ばっかりじゃねぇかよ」
「それもそうか……じゃあ俺は他に何を聞けばいいんだよ!?」
「知らねぇよ!――」
雪夜は二人のじゃれ合いを見ながら、夏樹が迎えに来たら今回のことや斎さんたちのことについていろいろ聞いてみようと思った。
俺の家族のこととかも……夏樹さんに話してみようかな。
でも、夏樹さんも知りたいって思ってくれてるのかなぁ……
まぁいいか。聞きたいって言われたら話せばいいし、聞きたくなさそうだったら話すのを止めればいいだけだよね!
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